長編小説

□Perfect PartnerZ
3ページ/81ページ



レティアは感激したようにフレイを見た。
彼女のそんな顔が珍しくて、それを眺める男2人の横で、レティアがアイルに元気良く言う。

『では旅行に行ってきます!雄飛を助けになんて行きません!絶対に!』

絶対に助けにいくつもりだ、と全員が思ったが、アイルは溜め息を吐いて頷いたのだ。

『…しょうがない。土産を忘れるなよ』



…そうして、今に至るのである。

「土産、忘れる訳にはいかないな」

リーがそう言えば、アッシュとレティアが小さく笑って頷いた。
土産は、ウィンと雄飛だ。

「じゃ、行こう」

歩き始めた3人の頬を冷たい風が掠め、足元に積もった雪がザクザクと鳴る。
数分もしない内に玄関に辿り着いたが、そこでリーは眉を寄せた。

「……ん?…子供…?男の子みたいだけど…」

呟いたのはアッシュだ。
小さな身体が玄関の扉からはみ出している。
頭隠して尻隠さずの体勢になっているが、それは暗い屋敷の中を必死で覗いているようにも見えた。

「おい、坊主!こんな所にいたら危ないぞ」

近付いて声を掛ける。
小さな身体は一瞬驚いたようにピクンッと揺れて、それから恐る恐るリー達を見上げた。

「……あ…!」
そして見事に、リーと少年の声が重なる。

「お、お兄ちゃん!」

「お前…あの時の…っ」

財布泥棒、と続けるはずだった口をリーは閉じた。
少年が物凄い勢いでリーに抱き付いたからである。

「あの時はごめんなさいお兄ちゃん…!お財布の中身は使ってないから安心して。もう1人のお兄ちゃんの分も…」

「そ、そうか。それよりお前、何でこんな所にいるんだ。ここは危ない、早く帰らなきゃ駄目だ」

「帰らない!だって中にママがいるんだ!」

「…ママ?」

リーは横にいるアッシュ達と目を見合わせた。
どういう事だろう。
この子は貴族の子なのだろうか?

「君、名前は?」

リーにしがみつく少年にレティアが近付き、にっこりと微笑みながら問い掛ける。
少年はレティアを少しの間見上げてから、小さく名前を呟いた。

「……レヴィ」

「そう、レヴィね。どうして君のお母さんが中にいるのかしら?」

「…ママは…」

少年─レヴィはうつ向いた。
言って良いのか、子供心にも考えているようだった。
けれど中に入った母の事が心配なのだろうか、レヴィは少しすれば3人を交互に見ながら不安気に話しだした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ