長編小説
□Perfect PartnerZ
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レティアは感激したようにフレイを見た。
彼女のそんな顔が珍しくて、それを眺める男2人の横で、レティアがアイルに元気良く言う。
『では旅行に行ってきます!雄飛を助けになんて行きません!絶対に!』
絶対に助けにいくつもりだ、と全員が思ったが、アイルは溜め息を吐いて頷いたのだ。
『…しょうがない。土産を忘れるなよ』
…そうして、今に至るのである。
「土産、忘れる訳にはいかないな」
リーがそう言えば、アッシュとレティアが小さく笑って頷いた。
土産は、ウィンと雄飛だ。
「じゃ、行こう」
歩き始めた3人の頬を冷たい風が掠め、足元に積もった雪がザクザクと鳴る。
数分もしない内に玄関に辿り着いたが、そこでリーは眉を寄せた。
「……ん?…子供…?男の子みたいだけど…」
呟いたのはアッシュだ。
小さな身体が玄関の扉からはみ出している。
頭隠して尻隠さずの体勢になっているが、それは暗い屋敷の中を必死で覗いているようにも見えた。
「おい、坊主!こんな所にいたら危ないぞ」
近付いて声を掛ける。
小さな身体は一瞬驚いたようにピクンッと揺れて、それから恐る恐るリー達を見上げた。
「……あ…!」
そして見事に、リーと少年の声が重なる。
「お、お兄ちゃん!」
「お前…あの時の…っ」
財布泥棒、と続けるはずだった口をリーは閉じた。
少年が物凄い勢いでリーに抱き付いたからである。
「あの時はごめんなさいお兄ちゃん…!お財布の中身は使ってないから安心して。もう1人のお兄ちゃんの分も…」
「そ、そうか。それよりお前、何でこんな所にいるんだ。ここは危ない、早く帰らなきゃ駄目だ」
「帰らない!だって中にママがいるんだ!」
「…ママ?」
リーは横にいるアッシュ達と目を見合わせた。
どういう事だろう。
この子は貴族の子なのだろうか?
「君、名前は?」
リーにしがみつく少年にレティアが近付き、にっこりと微笑みながら問い掛ける。
少年はレティアを少しの間見上げてから、小さく名前を呟いた。
「……レヴィ」
「そう、レヴィね。どうして君のお母さんが中にいるのかしら?」
「…ママは…」
少年─レヴィはうつ向いた。
言って良いのか、子供心にも考えているようだった。
けれど中に入った母の事が心配なのだろうか、レヴィは少しすれば3人を交互に見ながら不安気に話しだした。