籠
□俺と君と
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灰色の秋空の下。
俺はあてどなく歩いていた。
目的はない。
用事はもう済んだのだ。
だからこうやってわけもなく歩いている。
ついさっき、恋人と別れた。
これが用事。
食い違いがあった。
これが理由。
俺が求めていたものとは、どこかが違ったらしい。
それを感じたのか、彼女から別れ話を持ちかけてきた。
優しい優しい彼女。
自ら身を引く勇気を持ち合わせていた女性。
馬鹿でどうしようもない俺。
ただ自分の思いを押し付けて、相手をまともに見ようとしなかった男。
いつからこんなになってしまったんだろう。
その答えはもう知っている。
越野が死んでしまってからだ。
あの日から俺は、越野を忘れようとしてさまよっている。
だけど、心のどこかで求めている。
あの姿を、あの声を、あの笑顔を。
まだ忘れない越野を相手に重ね、同化させ、重ねきれず、失望する。
そして、相手に呆れられ、ふられてしまう。
そんなことが数回続いた。
今日も、そう。
また、求めて歩かなければならない。
俺の溜め息は、人混みの中へ消えていった。