仙→越で19題

□4 余裕なふり
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君は泣いている。


伏せた両眼から、


はらはらと。


次から次へと流れる涙を、
拭おうともせず、
止めようともせず。


声も出さず。


ただはらはらと、
舞い散る桜の花びらのように、
降りしきる雪のように。


何かを押し出そうとするように。













言葉。


何か言わなくては。


慰めなくては。



だけど、
出てくるのは、
月並みな言葉ばかり。






君を泣かせているのは、俺。


余裕があるつもり。

君を安心させているつもり。


そんな行動が、
全て裏目に出て、


君の涙を見ることになる。



ごめんね、ごめんね。



でもどうしたらいいか、
わからないんだ。



一生懸命やってるのに。



こんなにも好きなのに、
こんなにも傷つけて、




俺は一体、何がしたいんだろう。



余裕なんて、ない。



ごめんね、ごめんね。



もう、言ってあげる言葉がない。




だから、
ね、
少しだけ、
君を、
抱きしめさせて。




ごめんね。


ごめんね。



今だけは。


このままで。











君に出会ってから、
余裕なんてもの、
とうに捨てた。





          *end*
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