仙→越で19題

□3 単刀直入に
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「お前、はやく写せよ。」


越野は頬を膨らませながら言った。
結局、部活が忙しくて(言い訳じゃないよ)夏休みの課題が終わんなかった。
先生に残ってやれって言われたけど、暑かったし、部活もめんどかったから、帰ろうとしていたのに。


越野に見つかった。


体育館の前をまさに過ぎようとしているときに、大声で呼ばれた。


「センド――!!サボんな―――!!」



だから今俺は、一生懸命答え写しをしている。
ノートの向こうには、Tシャツ姿の越野が睨みをきかせている。


「お前課題出さないと部活出られないんだぜ?知ってたの?」

「え、そうなの?」


「おまえなぁ、もっとキャプテンの自覚を持ってなぁ、」


「そう言う副キャプテンはどうしてここに?」


練習熱心な越野のことだ。
俺のことなんかほっとくと思うんだけど。
まして越野は副キャプテンなんだから、俺の替わりに指示出すはずなのに。
今頃植草たち困ってるかなぁ…。



「うっ、………。それは………、」



少しうつむき加減になる越野。
普段は真ん中で分けている髪が、するりと落ちてきて、容易に表情を窺わしてはくれない。



―――言い訳、考えてんだろうな…。



こんなときの越野は、恥ずかしいのか、絶対に本心を語らない。
だからこうして少しの間考え込み、突飛な言い訳を捻り出す。
そしてぱっと顔をあげて、嬉しそうに嘘を口にするんだ。
まぁ、もう慣れたし。
最初から嘘って分かってるから。
それに、黙って聞いてやるのも優しさだと思うし。



だけど、今日のは違ったみたいだ。





「…だってさ、おまえ来ないと、部活って感じしないし…。」





―――あれ、それって…?


「それって、俺がいないと淋しいってこと?」



ぼっと、音でもするかのように、越野の頬に赤みが差した。



「ち、ちがっ…!!ホラ、試合前だし、一人でも欠けるとヤバいだろ?合わせ辛くなるっていうか…。」




そんな越野が愛おしくて。
無意識に、越野に微笑みかけている自分に気付かなかった。




「な…っ!!なに笑ってんだよ?!俺は部活のことを考えて…っ!!」


「だってさ、越野がここにいるってことは二人いないってことだし。そんな大切に考えてる部活よりも、俺のこと心配してくれてるし。俺って大事にされてるんだなって…。」


「キモチワリィこと言うなっ!!大体キャプテンのおまえがしっかりすれば、俺はこんなとこで油売ってたりしなくてすんだのに…。オラッ、手ェ休めんな!!」



真っ赤になった頬は、しばらく戻らないだろう。
そんな顔見られたくないから、越野はまだここにいる。
そうだろ?
自惚れが体を巡る。



聞きたい。
聞いてみたい。
越野のホントウの気持ちを。




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