□一生懸命
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暗い、部屋の中に、お前と、俺。


この部屋は、すでにお前に支配されていて。


俺は、その支配から逃れようとも、
まして逆らおうともせず、



ただ、離されないよう、ただ、追いかけていくんだ。







「やっ……ん!!…はァ、」

「越野、力抜いてよ、」

「だっ、て、いてェ…よ、」

「じゃあ、やめようか…?」

「い、やだ…っ、」


だって、お前、そんなことしたら、泣きそうな顔するじゃねぇか。

だから、俺は、無理をする。

んな顔見たくねぇもん。

でも、お前は、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、にっこり微笑んできやがった。

その顔が、好きだ。

胸の鼓動が、止まらない。



どんどん俺の中に入ってくる仙道自身。

きつくて、苦しくて、ぎゅっと目を瞑り、仙道の背中に手を伸ばす。

だけど、掴むものがなくて、空を握る。


仙道の顔を、そっと見る。

目が合い、にこりと笑われた。


泣きたくなった。

やだ、もう、俺ばっか一生懸命で、馬鹿みたい。


「…っふ、……ふぇ、っく、」


本当に、涙が出てきた。


「…越野?ゴメン、痛かった?やめようか?」


それ聞くの、二回目。

何度言ったら分かるんだよ?

中途半端に愛してやめんな。

痛くて泣いてんじゃねぇよ。

俺が、仙道に、全然追いつけてない気がして、嫌なんだ。

自分がみっともなくて、嫌なんだ。

悔しいよ。


「う、うぅ、くそ、…。」


涙がとまんねぇ。

お前に、これ以上、格好わりぃとこ見せたくねぇのに。

絶対、呆れてんだろ、仙道。

恥ずかしい。


空を握っていた手は、今は、溢れ出る涙を抑え付けている。




  
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