□色
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あなたと出会ってから、世界に色がついた。






朝、起きる。

目に飛び込んでくるのは、薄紅色の空気に包まれた里。



俺の、守るべき、里。






顔を洗う。

鏡に映る、黒い、黒い、俺の髪、瞳。



正反対なんだ、あの人とは。

白く、白く、孤高のあなた。

里が誇る、非凡な才能を持つあなた。

どこにでもいる、平凡な俺。

黒い、黒い、俺。






家を出る。

里は、森と共生している。

青々と茂る木の葉の木々は、馬鹿馬鹿しい、俺のちっぽけな嫉妬心を和らげた。






本日は、晴天なり。

昼食を食べながら、ふと、窓の外を見る。


青く、青く、突き抜けるようにどこまでも澄んでいる空。



青は冷たい色ではない。

そう教えてくれたのは、あなたの瞳。


上忍に似つかわしくない、人懐っこい笑顔で笑いかけてくれるあなたに教わりました。






受付で、あなたを待つ。



……来る。


表面上普通に事務をこなしている、ように見えているだろうか。

心はこんなにも騒ぐのに、機械のような受け答えしか出来ない、悲しい、仕事中の俺。

だけど、嬉しいあなたからの誘い。



『仕事終わったら、一緒に帰りまショ』だって。


俺の頬は、耳は、沈みかける夕日に負けないくらい、赤く染まっていただろう。

恥ずかしい。

でも、心地よい。






あなたと並んで帰る。

藍色のような紫色のような夜空に瞬いている星たちよりも、もっともっと、輝く色が隣にある。

目線を少し上げると見える、しなやかに揺れるあなたの髪は、そういう色だ。

夜と一体化し、闇に紛れている俺とは違う。

―――堂々となんて、出来やしない。




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