□泥だらけ
1ページ/2ページ

分かっている。

あなたが俺にとても愛を注いでくれているのも。

いつでも傍にいたいって思う気持ちも。

だけど…。

頼むから任務後に直行で来ないでください。

月夜はまだ、いい。

雨の日は特に禁止したい。



あなたは窓際にそっとしゃがむと、いつものように鍵を開けてしまう。

そっと部屋に入り込み、布団の上から俺に抱きついてくる。

そして、一つ俺に唇を落としてくる。

驚き、目を覚ますと、あなたはもう夢の中。

俺の布団は泥や血やなんやらで汚れちまっている。

次の日、掃除洗濯介抱に追われるのが目に見える。

忙しく働く俺の横で、あなたは包帯を巻いた腹を抱え、身じろぎ一つもせず眠りこけているのだろう。

別に家事やらが嫌なわけではない。

ただ、あなたの痛々しい姿を見るのは耐えれないんだ。

俺ン所に寄らず、真っ直ぐ病院に行ってください。

傷治るのが、遅くなるでしょうが。

なんか、俺が足を引っ張ってる気がするんです。

俺の所為で、あなたの包帯も厚く巻かれる。

痛いんだ、胸が。

会いにきてくれるのは、嬉しい。

傍にいるのは、もっと嬉しい。

でも。

あなたが目を開けてくれないのは、辛い。

傷だらけのあなたを見るのは、もっと辛い。


矛盾してる。

なんでこう、心になにか抱えてあんたの帰りを待ってなきゃいけないんだ。

あぁ、だんだん腹が立ってきた。

だいたいなんで俺なんかと付き合ってるんだよ、この人。

あんた、上忍だろ?

俺は中忍だ。

違いすぎる。

俺は、そんなに任務で疲れて眠りこけることはない。

本当に痛々しい姿になったこともない。

泥だらけで、帰ったことも、そんなに、ない。


引け目を感じるんだ。

"痛々しい"は"羨ましい"って事なんだろうか??

いや、痛いのキラいだし。

あ、そうか。

"痛々しい"="里のために頑張ってる"で、"羨ましい"んだ。



そりゃ、引け目だ。

悔しい通り越して、なんか、もう、…。

……やっぱ、好きなのか?

俺もどうかしてるよ。

でも、そう思えたら、なんか楽になった。

今すぐ、話したくなった。

早く、目を覚まして欲しくなった。

そして…………。



…………。

キス、したくなった…。

俺も、末期だなぁ。



でも、ま、いっか。

馬鹿になっても。

この人と一緒なら、泥だらけの道でも、進んでいける。


「お帰りなさい」

って言いたいから、目ぇ覚ましてください。


笑って、

「ただいま」

って言ってください。


僕らの道はここから始まる。




               *end*
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ