□俺と君と
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少し疲れた。

たまの休息も必要だ。

俺は公園に辿り着いた。

ベンチに腰を下ろす。

足が、心なしか重い。

自然と溜め息が、
また出てしまった。



越野。


越野。



いつも隣にいた人。

きっと、
一生に一人の最愛の人だ、と思っていた。



それが、どうして。

なぜ、なぜ。

こうなってしまったんだろう。




同じ大学に進むことを、
二人で決めた。

二人で部屋を借りた。

二週間前に、映ることにした。


越野は、
まだ家ですることがある、
と言うので、
俺だけ先にこっちに来ることになった。





俺の忘れ物に気づいて、
駅に向かう途中越野が車にはねられたと聞いたのは、
新しい住居に着いてからだった。





俺は、葬式に行かなかった。
自分でも子供っぽいと思ったけれど、
あの時の俺は事実を受け止められなくて、
越野を送ってあげることができなかった。

越野がいないなんて信じられなかった。
実感がわかなかった。
だから涙も流れなかった。
信じなかったから。




あの日から、
俺の中の越野は少しも変わってない。


傾きかけた夕日を仰ぎ見る。

俺がからかった時の、
朱に染まる越野を思い出した。











気づくと辺りはすっかり暗くなっていた。

肌寒い。

俺は公園を出ることにした。

ズボンのポケットに手を突っ込んだ。




この手は、
本当は、
越野と繋ぐはずだったのに。



指先は冷たくなっていた。




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