薬と剣

□薬と剣 五話
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リュウさんはゆっくり話してくれる。

リュウさんが思ったより早くオグム卿の逮捕命令が出たこと。
兵が邸に突入した時、たまたまリュウさんと合流し、捜査指揮をとったこと。
お師さんは軽傷ですぐ意識が戻り、僕を診ていてくれたこと。
僕は3日間意識が戻らなかったこと。


「セツが起きてくれてよかった」

微笑みながらリュウさんはしみじみ言う。

「また会えて、よかった」

顔をクシャリとさせ泣きそうな表情をするリュウさんが、小さな子どものように思えた。

たくさん心配をかけてしまったことが申し訳ない。

「・・・・・・」

何か言おうと口を開けかけるが、一体何をどうやって伝えたらいいのか。

リュウさんが心配そうにこちらを見てくれている。

なのに、何も言葉が出てこない。

いやだ。
僕、リュウさんに伝えたいことがある。


こわばる体を動かした。
布団にくるまったまま少し近付き、手を伸ばす。

どうしても震えてしまう手。
弱い、僕の心。

でも、何もしないのはダメだ。

僕が近付くのをリュウさんは驚いて見ていた。

「無理するな、セツ」

言ってくれる。

僕はリュウさんの手をとった。

「・・・・・・・た・・・助けてもらって・・・ありがとうございます・・・・」

震える手。
震える体。
こわばる顔。

それでも僕は笑った。

嬉しい。
リュウさんにまた会えて、嬉しい。


リュウさんは握った僕の手をそっと掲げ、その甲にキスを落とした。

「っ!?」

ビックリして手を引っ込めてしまう。

「ごめん。我慢できなかった」

リュウさんは苦笑いしている。


「・・・・・ゃじゃないです。
 ・・・・・・ビックリして」

小さな声だけどちゃんと言葉にする。

「僕、リュウさんと普通に話したり触れたりしたいです」


「・・・・・もう、お前は何だってそんなに・・・・」

リュウさんは顔を真っ赤にして再び僕の手をとった。

「俺もセツともっと話したいし、触れたい」

そしてソーッと優しく僕の手に二度目のキスを落とした。


今度は僕の手は震えなかった。
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