薬と剣

□薬と剣 五話
2ページ/5ページ

目を覚ますと知らない部屋だった。
肌触りのよい掛け布団のベットに寝ていた僕。
横を見るとリュウさんが椅子に座ってウトウトしていた。
窓から見る外は暗い。

一体どれくらいの時間が経ったんだろう。

意識を失う前のことを思い出す。
立て続けにいろんなことが起こり過ぎて、どれから考えて整理していったらいいかわからない。

なんだかボーッとする。
体がだるいな。
熱があるのかもしれない。

喉・・・・乾いた。

リュウさんを起こさないようにそーっと起き上がってみる。
でも気配が伝わってしまったみたいだ。

「セツ!?」

飛び起きたリュウさんの大きな声に体がビクリと震えた。

「っ!・・・・・すまん。大丈夫か?」

声を穏やかにして顔を近付けて来たリュウさんに、また体がビクリと震えた。
布団にくるまり、距離をとってしまう。
リュウさんはビックリした顔をして、それから悲しげな表情になった。

「俺がコワい?」

と聞く。


そうじゃない。
そうじゃないよ、リュウさん。
小さく首を振り、布団を握りしめる。
体を触られたあの、感触が。
無理やり押さえつけられる力が。
過去のあの、闇が。
僕の心をよぎっただけだよ。

「ごめ・・・んなさ・・い」

体も声も震える。

「責めてるんじゃないんだ。
 助けるのが遅くなってごめん。
 コワい目にあわせて・・・・・ごめん」

僕はまた小さく首を振った。

時々どうしても引きつれる・・・・僕の、心。

お師さんとの穏やかな時間の中で僕は心が動く、ということを知った。
感情の出し方を知った。
嬉しい時は笑い、悲しい時には泣き、悔しい時には怒っていいんだと知った。

僕は人形ではなく、人間でいていいのだと知った。


人でありたい、と願った。


でも、時々こうして闇はやってくる。
僕からいろいろなモノを奪って行こうとする。


「ガラゴを呼んでくる」

優しく言って、リュウさんは扉へ歩いて行こうとした。

「待って!」

自分の声に自分でビックリする。

「待ってください・・・・・・」

再び力のない声が出た。

リュウさんは驚いて、少し考えた後、すぐに側に戻って来てくれた。
椅子に座る。

「うん。いくらでも待つ」

まただ。
どうしてリュウさんはこんなに優しいんだろう。

どうしてリュウさんに優しくされると涙が出そうになるんだろう。

「ぁの・・・・・ぇと・・・・・」

呼び止めたものの、何を話していいかわからない。
リュウさんは優しく僕を見ていてくれる。

「・・・・・ここはどこですか?」

小さな声。しかも震えてしまう。

「エミリオ城の客室だ」

それでもリュウさんは聞き逃さず、答えてくれる。
続けてあの事件の一連を教えてくれた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ