薬と剣

□薬と剣 四話
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俺たちは出かける準備をした。

セツはコートにリュックを背負ういつもの格好。
俺はガラゴの服を借り、フードを深くかぶった。
顔を見づらくするために。


どちらからともなく手をつなぎ、エミリオの城下街を目指して歩く。
馬はガラゴが乗って行ってしまい、客馬車も通らないので徒歩での道のりだ。

今日は少し風がある。
セツの黒髪がなびいてこんな時なのにきれいだと思った。


お互い一言も話さなかったが、ガラゴを案じている思いは一緒だと強く感じた。

言葉は、いらなかった。





城下街では三日目の市をしていた。
最終日とあって活気がすごい。

とりあえず、心配だったが二手に分かれ、セツは市で聞き込み。
俺は城へ行きガラゴが来ていないことを確かめた後、紋章なしの馬車のことを伝え、再び市へ。
無事セツと合流できた。

「お師さん、市に店は出していたそうです。
 でも昼頃から姿が消えて・・・・・・
 店もそのまま置いてあったのを、近くの方が預かってくださってました。
 さっき荷物を確認したんですけど、リュウさんの書状はありませんでした」

不安そうに報告してくれるセツ。

「城の兵にも探すように言っといた。
 が、あの書状が城に届いて困る奴のところが一番あやしい。
 オグム卿は街の権力者だ。
 城から正当な手続きをして踏み入ると時間がかかる。
 俺は先にこっそり入っちまうつもりだが・・・・・」

セツを見る。

セツはその黒い瞳でまっすぐこっちを見ていた。

手を差し伸べて、告げる。


「一緒に行こう」


セツは瞳を見開いて2、3度瞬きすると、
「はい」
と小さく笑った。





オグム卿の邸は街の東にある。
石造りの立派な邸だ。
人通りはさほど多くない。
にも関わらず警備が厳重だった。
個人宅でこれは異様だ。
ガラゴのいる可能性が益々高まった。

正面の入り口は二人の門番とウロつく警備兵がいた。
当然裏口にも二人番人が。

「仕方ねーな、寝てもらうか」

手を拳にして指を鳴らすとセツがそれを遮った。

「僕に任せてくれませんか?」

「・・・・・どうするんだ?」

「寝てもらいます」

「?」

「リュウさん、ぼくが合図するまで来ないでくださいね」
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