薬と剣

□薬と剣 十七話
2ページ/8ページ

王の執務室。
昼間思いついた書類のチェック機関の立ち上げを王に説明する。
それはすぐに受理され、実行はカザトがすることとなった。
スムーズに事が運んだことにホッとしている所に父上が話しかけて来た。

「セツの記憶は戻ったのか?」

「・・・・・いや、まだ」

「なぜセツなのだ?」

この数日繰り返し聞いて来られていること。
もういい加減説明するのが面倒くさい。
いくら説明しても、わかろうとはしない父上に苛つく。

「なんでも、です」

俺はぞんざいに返した。

「マズルカの国から手紙が来ただろう?
 あの国の姫は大層美しいと聞く。
 一度会ってみたらどうだ?」

「必要ない。
 俺にはセツがいる」

ハッキリと言う。
父上はため息をついた。

「お前は王太子となった。
 女を正妃にすべきだ。
 ・・・・・・別れろとは言わん。
 側室にすればよい」

「・・・・俺はセツのために王太子となった。
 セツが正妃にならないなら、王太子を辞退する」

「・・・・・」

黙り込む父上。
用件はなくなった、と部屋を出ようとすると呼び止められる。

「今社交棟にジャイロの国から第二王子が来ている。
 ・・・・・会っておきなさい」

含みを持たせたその言い方にカチンときた。
この際男でもいい、と。
国に利益のある人物にしておけ、と。
元奴隷の者などやめておけ、と。

遠回しにそう言われたことに怒りを覚える。

「・・・・・失礼」


声をかけ、力任せにドアを閉めて退室した。
乱暴に閉めた音に外に控えていた侍女が驚いていたが、気付かないフリをしてその場を去った。



無性にセツに会いたい。
・・・・・・・夕食に誘っても、怯えられないだろうか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ