薬と剣

□薬と剣 十四話
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馬車が走り出してからどれくらいたったのか。
かなりの距離を走ったと思う。

ふいに、馬車が止まり、誰かが中に入って来た。
足の拘束と目隠しを取られる。

腕を引っ張られ馬車から降りると、そこはもう城内だった。
・・・・・おそらく、タベケ城。
石造りの城は主だった装飾品はなく、冷たい感じがした。

「来い」

ヨノ、と呼ばれていた人に引っ張られ、僕は歩き出す。
広いエントランス。
その中央の長い長い階段を登って行く。
一番上には大きな両開きの扉があり、開かれると奥に玉座が見えた。
誰か座っている。
あの人が、タベケ王。

足が震えた。

「しっかり歩け」

ヨノという人に腕を再び引っ張られる。
近付いて見たタベケ王はガッシリとした体格に白い長い髪をしていた。

真紅のローブを纏い、気怠げに座っている。
その眼は独特で、灰色に黒い瞳が縦に一筋。
こちらを見る目に背中がゾクリとした。

・・・・・コワい。

「父上、ご所望の『薬師セツ』を連れて参りました」

父上?
では、このヨノという人は王子?

「本物だろうな」

「確認してあります」

「・・・・・よくやった」

「ありがとうございます」

淡々とした会話。

「セツとやら。
 お前に聞きたいことがある」

ヨノ王子に向けられていた視線が再びこちらに向けられた。


「お前、あの毒の成分を見た目だけで当てたらしいな。
 本当か?」

「・・・・・」

僕は黙秘した。

「ガラゴ・ファインドの弟子だというのは?
 事実か?」

「・・・・・・」

「ふん。 立場がわかっていないようだな。
 まぁいい。 今日はもう遅い。
 明日に必ず吐かせてやる。
 おい、首輪を付けて牢につなげ」

「はっ!」

近くにいた兵が鉄の輪の首輪を僕の首にはめようとする。

「ん?」

僕がつながれる様子を見ていたタベケ王が、僕の胸元に目をとめた。
玉座から立ち上がると僕の方へ近付き、胸元を広げる。

・・・・・・そこにはリュウさんからもらった鎖に通した指輪が光っていた。
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