薬と剣

□薬と剣 十三話
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それから三日間は怒濤の日々だった。

まず、風薬粉の作り方をエミリオ、カッチオ、センドの薬師たちにレクチャーした。
でも僕の薬の作り方は普通の薬師からすると特殊な行程が多いようで、ゆっくり繰り返し実際にやって見せるという方法をとらなければならなかった。
この薬の性質上、手早くしないと混ぜたものの分離が起こってしまう行程のところがあって、とても困った。
実際見てもらうので小グループずつ一通り見てもらう。
これだけで丸1日かかった。

二日目。
各薬師量産体制に入る。
でもあちこちでトラブルが起こり、その度僕が復旧に向かった。
その日の夕方、『一人の薬師が全行程を行うのではなく、一人二行程して次の薬師に渡す流れ作業にしましょう』と提案してみる。
提案したもののそんな作り方は邪道だ、とカッチオの薬師たちから反対された。
それをなんとか僕とユーマさん、ソーマさんで説得しに回る。
最後の一人が首を縦に振った時にはもう次の日の明け方だった。

三日目。
そんなこんなでやっとスムーズな量産体制に入る。
このペースでいくと今日明日中にかなりの量が作れる。
トラブルも減り、僕も作業に加わった。
ホッとした。


その、三日目の夜。
その日は曇っていて月も星も出ておらず、辺りは闇に包まれていた。
しかも濃い夜霧が出ていて視界がとても悪かった。

僕は三日間でようやく起動に乗った風薬粉作りの件でとても疲れていて、深い眠りについていた。
異変を感じたのはソーマさんに揺さぶり起こされてから。

「なんですか?・・・・・・」

「しっ!!」


疑問を遮るように小さな声で鋭く注意された。

そのまま手を取られて布団を出、荷物と荷物の間に二人で入る。
頭から毛布をかぶり、肩を寄せ合った。
訳はわからなかったけどソーマさんの緊張感が伝わって来て、ただならぬことが起こっているのはわかる。

遠くで、近くで、争う声や悲鳴が聞こえる。
・・・・・・敵の奇襲だ。

僕たちのテントにも誰かが勢いよく入って来る音がした。

「チッ、ハズレだ」

言い捨てた人が出て行く。
僕とソーマさんは詰めていた息を吐いた。
でも、それも束の間のことだった。

パチパチと音がする。
火を・・・・・放たれたんだ。
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