薬と剣

□薬と剣 十二話
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リュウさんのテントは広くて、テントだけれどちゃんとベッドがあった。
入り口を入った所で尋ねられる。

「緊張してる?」

コクリと頷く。
だって・・・・・・

そういうことには悪い思い出しかない。
リュウさんはコワくない。
寧ろこうなれて嬉しいのに、どうしても不安が拭えなかった。

「セツ・・・・」

優しく呼ばれて顔を上げる。

リュウさんの唇が僕のそれと重なった。
最初は軽く。
徐々に深く。

「ん・・・・」

悪い意味ではなく、体が震える。
そんな僕を見て笑うリュウさん。
その笑った息が首筋にかかって体がビクリとはねた。

リュウさんはまたクスリと笑うと僕を横抱きにしてベッドへ移動する。

ゆっくりそーっと横たえられた。
僕の上には、リュウさん。
それだけでとても恥ずかしい。

顔が、体が、熱い。
まだ、震える体。

リュウさんが僕の髪を大きく3度梳いた。
梳いた両手はそのまま僕の両頬を包み込む。

「セツ・・・・
 愛してる」


その瞬間の気持ちを。
僕はなんと表現すればいいのだろう。

涙が、溢れる。
「ぼ、僕も・・・・・
 愛してます」

泣きながら嗚咽混じりに必死で伝えた。

再び重ねられる唇。
でも今度は短くて。
チュッ、チュッと音をたてながら、唇は下へ降りていく。

僕の上衣はいつのまにかはだけられ、腕に引っ掛かっているのみだった。

リュウさんの唇が僕の胸の突起を吸った時だった。


ビリリッと体を何か走り抜けたような感覚に、僕は大きな声をあげ、リュウさんの頭を押しやってしまう。

「やぁっっ!!」

「・・・・・セツ?」

リュウさんが寂しげな、心配そうな顔でこちらを見ている。

「ち、違うんです!」

不安にさせては、ダメ。

「か、体がおかしくて・・・」

「おかしい?
 どんな風に?」

「リュウさんが触れたところが・・・・
 何か・・・・
 痺れたようになって・・・・・」

言いながら、不安になって泣けてきた。
僕、ホントに、おかしい。
嫌われたら、どうしよう。

「ぼ、僕の体、変なのかもしれませ・・・・・」

言葉の途中でギュッと抱きしめられる。

「・・・・今までそういう風になったこと、ないのか?」

「は、はい・・・」

「そうか」

リュウさん、何故か嬉しそうだ。


「セツ、それは変でもなんでもないんだぞ」

「ほ、ほんとに?」

「ほんとに。
 そんなになってくれて、俺は嬉しいんだけど」

「う、嬉しい・・・・・?」

コクリと頷くリュウさん。
その顔は本当に嬉しそうで。

「ぼ、僕、体が変に動いたり、変な声が出てしまうかもしれません」 

「いいよ。寧ろそんなセツが見たいし、聞きたい」

耳元で囁かれる。
その吐息ですら、僕をビクリと震わせた。

「っ・・・・・
 リュウさんに嫌われたり呆れられたりするのが・・・・
 こわいです」

リュウさんは顔を上げて僕を見た。
少し、怒っているみたいだ。

「お前は・・・・
 わかってるようで、わかってねーな」

「あっ!」

胸を強く摘まれた。

「そんなこと、絶対ならねぇ。
 そうさせられるなら、させてみろ。
 ・・・・・・できる訳ねーけどな」
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