薬と剣

□薬と剣 十話
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旅用の大きなリュックを持って、暗い道をお城へと歩いた。

お師さんには置き手紙をしてきた。
ホントは顔を見てちゃんと話したかった。
でも、お師さんは絶対引き止める。
それを振り切るのは、辛い。

ちゃんと向かい合って話せなかった弱さ。
お師さんにたくさんもらった温もりを裏切るようにコッソリ出てきた弱さ。
どうして僕はこんななんだろう。

お師さんごめんなさい。
ごめんなさい。

歩きながら、泣いた。
泣きながらも、引き返すことはできなかった。



城に着くと門番の方に王からもらった紙片を見せた。
サイン入りのそれを見て、すぐに中に通される。

話が通っていたようで、すんなりと案内された。
案内されたのは、鍛錬棟。

「セツ!」

宮廷薬師長のユーマさんが出迎えてくれる。

「あなたが来てくれるとは心強いです」

手を握られる。

「いえ、僕、戦に行くのが初めてなので色々教えてください」

ユーマさんの傍らにはソーマさんも居た。

「ソーマさんも、よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる。
ソーマさんは目を軽く伏せた。

「ソーマ!
 ちゃんと挨拶しなさい!」

ユーマさんの声に、軽く会釈しなおすソーマさん。
最初に会った時にも思ったけれど、僕、ソーマさんにあまりよく思われてないみたいだ。
ソーマさんの会釈を見届け、ユーマさんが話し出す。

「旅の支度は?」

「できてます」

「そう、よかった。
 こちらももう準備ができています。
 私たちは第三部隊になります。
 日の出とともに出発ですから、急いで乗り込みましょう」

鍛錬棟のすぐ近くに配備された第三部隊。
そこの物資や食料、薬材料が乗っている荷馬車に一緒に乗り込むので中はかなり狭かった。
ユーマさん、ソーマさん、他数名の薬師と分かれて乗り込む。

僕はソーマさんと二人で同じ荷馬車だ。
お互い何も話さず、出発を待った。

辺りが薄明るくなってきたと同時に時を告げるラッパが鳴り響き、荷馬車がガタンと揺れた。
出発だ。

荷馬車の幌の中にいるので周りの様子がわからない。

「あの・・・・」

僕は思い切ってソーマさんに話しかけてみた。
こちらを見るソーマさん。

「ここ、第三部隊なんですよね?」

「・・・そうだよ」

「部隊ってなんですか?」

「・・・・は?」

ポカンとこっちを見るソーマさんに恥ずかしくなった。

「ご、ごめんなさい。
 僕、全然勝手がわからなくって」

ソーマさんは少し呆れたように説明してくれる。

部隊というのは一つの軍を分けたもの、ということだった。
今回は第四部隊まであるらしい。

先頭にリュウさん率いる第一部隊。
その次にザフト王率いる第二部隊。
そして僕ら薬師や食料、必要物資等が中心の第三部隊。
最後にマナト王子率いる第四部隊。
カザト王子は城を守るということだった。

どの部隊も大人数で編成されていた。
それだけ大きな戦になるんだろう。

リュウさん・・・・・・。
荷馬車に揺られながら、第一部隊にいるというリュウさんに想いを馳せた。
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