薬と剣

□薬と剣 九話
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会いたい、な。
朝ご飯の後、畑の世話をしながらそう思った。

昨日の夕刻別れたばかりなのに、そんなことを思う僕は変なんだと思う。
温室のことを思い出して赤くなった。

リュウさんが、僕を好き・・・・・?
胸の中がポゥっと暖かくなって、くすぐったくて、変な気持ち。
会いに行くから、と言ってくれた。
僕も会いに行く、と言った。

昨日の今日で会いに行ったら・・・・・・ダメだよね、やっぱり。

リュウさんと、僕。
かっこいいリュウさんと、冴えない僕。
王子様のリュウさんと・・・・奴隷だった僕。
今更ながらに思う。

つりあわないな。

どうしてリュウさんみたいな素敵な人が、僕を好きだと言ってくれるのかわからない。
でもそう言ってくれた時、僕はすごく・・・・幸せだった。

僕を幸せにしてくれたリュウさん。
僕もリュウさんに幸せって思ってほしいな。
どうしたら幸せって思ってくれるかな。


畑の入り口の蔦がガサガサと揺れた。

考えごとをしながら作業していたから時間がかかってしまっていた。
お師さんが迎えに来てくれたのかもしれない。

視線を入口に向けながら声をかける。

「ごめんなさい、遅くなって。
 もう少しで終わりま・・・・・」

言葉が詰まった。
ビックリしすぎて。

「久しぶり」

冗談めかして言うリュウさん。
昨日会ったばかりなのに、久しぶり、なんて変だ。
でも、僕の感覚的にはそんな感じで笑えなかった。
何も言えず固まる僕に近付くリュウさん。

「セツ?」

「ほ、本物?」

思わず言ってしまった。

リュウさんはポカンとした後笑い出す。

「ハハハ、何?
 偽者に見える?」

「そ、そうじゃなくって・・・・・。
 会いたいなって思ってたら出てくるから夢かと・・・・わっ!!」

ギュウッと抱きしめられる。

「会いたいと思ってくれてたんだ」

耳元で囁かれて、くすぐったくて、首をすくめた。
リュウさんと会ってから何回も抱きしめてもらっている。
でも何度そうしてもらっても、何故かドキドキして恥ずかしい。
声が出せなくてコクリと頷く。

「俺も会いたかったよ」

甘く囁かれてドキドキが高まった。
嬉しいけど、恥ずかしい。

そのまま唇を重ねられる。

「ん・・・・・」

すぐ離れていくかと思ったそれは、深く長く重ね合わされた。

「・・・・・ぅ・・・ふ・・ぁ・・」

声がもれる。
恥ずかしい。恥ずかしい。
うっすら涙がにじんだ。

リュウさんの舌が入ってきて動かされているのはわかったけど、何がどうなっているのかはわからない。

次第にボーっとして足から力が抜けていった。
リュウさんが腰と後頭部を支えてくれていなかったら、ペタリとしゃがみこんでいただろう。

やがて離された唇。

「ぁっ・・・・」

ボーっと見上げる僕にリュウさんは

「やば・・・・・」

と呟いた。

「お前、可愛すぎる・・・・・」

おでこに、頬に口付けされる。
再びギュウッと抱きしめられた後、離れた。

「今はここまで。
 後は帰ってからな」

まだフワフワしている僕はリュウさんの言っていることが全然わからず首をかしげた。

「・・・・・いずれ、お前を抱きたいってこと」

ハッキリ言われ、目を見開いてしまう。
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