薬と剣

□薬と剣 七話
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目が覚めて、しばらくジッと自分がどこにいたかを思い出す。

・・・・・・・ここ、お城だった。
部屋を見回すとソファに誰か寝ていてビックリする。

・・・・・・・リュウさん?
今日も泊まってくれたんだ。

胸の中が暖かくなる。
優しい・・・・・優しいリュウさん。

音を立てないようにソーっと起きて、ソファの側まで寄った。
リュウさんに毛布をかける。

昨日まで夜もあまり寝ず、僕に付きっきりだったと聞いている。
昨日の朝はわずかな衣擦れの音で飛び上がって起きたのに、今日はまだグッスリだ。

・・・・・・僕のせいで疲れてるんだ。
ごめんなさい。
心の中で呟く。

ジッとリュウさんの寝顔を見た。
少し俯いた顔に金の前髪がかかって、整っているリュウさんの顔がますます綺麗に見えた。

・・・・・・カッコいいな。

優しいし、カッコいいし、きっとモテる。
しかも大国の王子様だ。
僕、すごく分不相応な人を好きになってしまったんだな。


切なくなってうつむいた。


今まで自分が誰かに恋をする、とか想像もしていなかった。
自分にはそういう感情が欠落しているのだと思っていた。

そういう気持ちを持てたら、きっと幸せに違いない、と思っていた。

それが・・・・昨日急に想いを自覚して・・・・・。


ポロリと涙がこぼれる。


リュウさんは男の僕にそんな風に想われても迷惑だろう。

周りに王位を継ぐことを望まれているし、王位を継いでその身に相応しいお妃様を娶るだろう。



・・・・・・僕の気持ちは秘めなくちゃいけない。

これ以上迷惑はかけちゃいけない。

ポロポロ涙が後から後から出てきて、しゃくりあげる声が出てしまいそうで、僕は来た時と同じようにソーっとベッドに戻り、布団に潜り込んだ。

体調も良くなったみたいだし、今日には僕とお師さんは森へ戻るだろう。

・・・・・・笑ってさようならとありがとうを言いたい。
泣くのは今だけ。

リュウさんが起きるまでに泣きやまないと。
でも泣くまいと思えば思うほど涙は止まらなくって。
しばらく布団のなかで声を殺して泣き続けた。
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