薬と剣

□薬と剣 ニ話
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エミリオの城下町は近隣諸国の中では一番大きい。

住人が多いことはもちろん、町並もきれいで、隅々まで石畳がきちんと整備されている。

そのため馬車等が通りやすく、交通が盛んで遠方から来る人も多かった。



そして何より人々に活気がある。

特に市が出る日は売る人も買う人もたくさん街路にひしめきあって、とてもにぎわっていた。



僕らの薬の売り上げも、エミリオでの市が一番いい。

普通の店を持たない僕らには、市での売り上げがとても大事だ。
けれど、色々な物が安く手に入るので、日用品や調合に必要なものを買うのも大事。



そんな訳でいつもお師さんと僕は二手に分かれる。


今日は僕が先に店番だ。
がんばるぞ。





少し前に熱風邪が流行ったらしく、今日は熱冷ましと風邪薬がよく売れた。

他には傷薬、湿布、お腹の薬なんかがいつもと同じように売れていく。

「ねぇねぇ!
 これちょっとまけてよ!
 4ディールでどう?」

こんなお客さんも多い。
お客さんと売り手のやりとりが市の醍醐味。
このやりとりが僕は結構好きだ。

「まけられないんですよー。すみません。
 でもオマケが付きますよ。
 今日のオマケはバラ石鹸。
 いい香りだし、お肌もツルツルになりますよ〜」

「あらヤダ。
 薬よりそっちの方がほしくなっちゃう。
 こっちの傷薬も買うから2つ付けて〜」

「いいですよ。
 ありがとうございます」

僕はニコニコしながら商品と石鹸2つを紙袋に入れた。

ちなみに石鹸も薬調合と同じ要領で作った手作りの物だ。



そうこうしている内にお師さんが買ったものを抱えて戻って来た。

「よし、セツ、交代するぞい」

「はーい。
 熱冷ましと風邪薬補充してから買い出し行きますね」

お師さんからまだ済んでいない買い物リストと買い出し用の財布を受け取る。

自分用の財布も忘れずに持った。

「行ってきます」

「気を付けてな」
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