薬と剣

□薬と剣 十九話
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翌朝リュウト様は早くから名残惜しそうにご公務へ行ってしまった。

「今日は何をしようか?」

朝ご飯を食べた後、隣にいるヨグノに聞く。

「昨日の本の続きを読んで!」

「うん」

ソファに座ると膝の上にヨグノがちょこんと乗る。
可愛い。
ヨグノはどうやら字が読めるようだった。
でも僕に読んでと言う。

・・・・・甘えてくれてるんだろうな。
なんだか嬉しい。
今までお師さんに甘えることはあっても、誰かを甘えさせてあげることはなかったから。


本を広げて読み始めるとすぐにノックの音がした。
僕もヨグノも首を傾げる。
こんな朝から誰だろう?

「はい」

返事をすると入って来たのは知らない人だった。
茶色の長い髪を複雑に結い上げ、小さな花で飾ってある。
肌は白く、眼は蒼く、まるで御伽噺から抜け出てきたお姫様のような人だった。

「はじめまして。
 僕、ジャイロの国の第二王子、クロエっていいます」

ニコリと微笑みながらの言葉にビックリする。
男の人?
とても美しい人。

「君がセツ?」

聞かれて慌てて立ち上がった。

「は、はい。 僕がセツです。
 はじめまして」

ペコリと頭を下げた。

「僕もね、リュウト様の正妃候補なんだよ?
 だからもう一人の正妃候補の君が気になって・・・・・」

「え・・・・?」

正妃候補って僕だけじゃなかったのか。

冷静に考えてみるとそれはそうだと思う。
どうして今までそんなことに気付かなかったのか。
勝手に僕だけだと思い上がっていた自分が恥ずかしい。

「ザフト・エミリオ王とうちの父上が懇意にしていてね。
 王から父が直々に頼まれたんだって。
 どうかうちのリュウトに嫁いでくれないかって。
 なんでもセツ、君、元性奴隷だったっていうじゃない?」

背筋がビクリと震えた。
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