薬と剣

□薬と剣 十七話
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着替えてから焼き菓子を持ってヨグノの所へ行った。

中には入れないので小さな窓越しにお菓子を渡すと、とても喜んでくれた。

「もうすぐここから出られるよ」

「ホントっ!?いつ?!」

「いつかはわからないけど、約束したから」

ニコニコと喜んでいるヨグノに僕まで嬉しくなる。

「どうやって出られることになったの?」

「リュウト様にお願いしたんだよ」

途端にヨグノは固まった。

「お兄ちゃんは・・・・リュウトの仲間?」

「・・・・・そうだよ」

何と答えたものか迷ったし、仲間という言葉が適切なのかどうかはわからない。
けれど、ヨグノが尋ねてきているニュアンス的には間違っていない気がした。

「・・・・どうして?」

「え?」

「どうしてリュウトの仲間なのに僕に優しくしてくれるの?」

「・・・・・仲間だからだよ」

「・・・・・・?」

「リュウト様はね、ヨグノを守ろうとしているんだよ」

戦なんて大人の都合で、子どもにはわからないだろう。
でも、ヨグノに少しでも何かが伝わるといいと思った。

「・・・・・・わかんない」

「・・・わからなくていいんだよ」

僕の言葉をジッと聞くヨグノ。

「これはね、こちらの事情で、ヨグノにはヨグノの気持ちがあるからね。
 無理してわかろうと思わなくって大丈夫だよ」

「・・・・・わからないよぉ」

泣き出したヨグノの頭を扉ごしに撫でた。

「ごめんね・・・・」


本当はギュッと抱きしめたいけれど。
・・・・・そこまで考えて思った。
僕もこの部屋に住んでは?
元々与えられた部屋は僕には豪華過ぎるし。
部屋を移るだけなら迷惑はかからないだろう。

また、リュウト様にお願いしてみよう。


僕はヨグノが泣き止むまで頭を撫で続けた。
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