薬と剣

□薬と剣 十九話
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久しぶりの薬の調合はとても楽しかった。
何をどの分量で混ぜてみよう、とか、ここで熱を加えてみよう、とかそういうことを考えるのはとても楽しい。

体にやさしい胃腸風邪薬はすぐにできた。
詳しい作り方も伝えて用事は終わったけれど、もう少し調合をしたくてユーマさんにお願いした。
二つ返事で僕の調合実験の許可をくれたユーマさんは僕の手元を熱心に見ていた。
ソーマさんも熱心にメモをとっている。

ユーマさんもソーマさんもとても調合が好きなのが伝わってきた。

「セツ、今温めたのは何故?」

「これですか?
 この行程で一瞬温めて置くと後から粉を入れる時に溶解しやすくなるんです」

「・・・・・なるほど」

3人で薬の話をしながら調合している一時、僕は朝から考えていたことを忘れていたように思う。

けれども調合室への来客で、すぐに思い出すことになった。

「あれっ?セツ?」

マナト王子と一緒にクロエ様が入って来た。
もう一人、知らない女の人。
オレンジの長い髪を緩くウェーブさせたその人はクロエ様に負けず劣らず美しい人だった。

二人を案内していたマナト王子は意外そうに言った。

「セツ、知り合い?」

僕は言葉を返そうとしたけれど、クロエ様が遮るように喋り出す。

「ええ、今朝急に僕の部屋に来てくれて。
 『僕が最有力正妃候補のセツです。
 あんたはとっとと国に帰ってよ』って挨拶してくれたんです」
ニッコリと言う。
僕はビックリしてクロエ様を見た。

「それは本当・・・・」

話しかけたマナト王子を遮るようにクロエ様は話し出す。

「あぁ、どうしてここにいるかというと、一度名高いエミリオ城の調合室を見てみたかったから。
 マナト王子にお願いして案内してもらったんだ。
 そんなに睨まないでよ、セツ」

また驚いてしまう。
僕、睨んでた・・・・・?
目をパチパチとしてみた。

隣でソーマさんが小声で言う。

「睨んでなかったよね?
 アイツ誰?」
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