薬と剣

□薬と剣 十九話
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「どうやってリュウト様に取り入ったか知らないけどそんな人が正妃とか無理だよね?
 国民が黙ってないと思うし。
 果てはリュウト様の名前に傷が付いてしまうよ?」

諭すように話しかけてくるクロエ様。

「僕ねぇ、争いごとってあんまり好きじゃないんだ。
 自分から身を引いてくれると嬉しいんだけど」

ニッコリと笑顔で言われる。

「あ、正妃候補を外れても職は保証してあげるよ?
 君、薬師なんでしょ?
 うちの城の薬師見習いとして雇ってあげるからね。
 給金もいい値出すよ。
 どうかな?」

ニコニコとずっと笑顔のクロエ様。
突然の訪問と告げられた内容に頭がついて来ない。

「あ、あの・・・・・」

「ん?」

「僕、ちょっと混乱してしまって・・・・・」

「アハハ、わかるよ。
 僕の出現で計画だいなしだもんねぇ。
 まぁちょっとの間いい目見れただけよかったと思いなよ。
 性奴隷から城の薬師見習いだって随分な出世じゃない。
 ん〜、でもそうだね。
 少し時間をあげるよ。
 また明日来るね。
 それまでに答え出しておいて」
最後まで笑顔でクロエ様は部屋を後にした。
出て行くと同時に僕は座り込んだ。

「お兄ちゃん、大丈夫?!」

ヨグノが心配そうにこちらへ来る。

「大丈夫だよ」

心配させまいと笑って言ったつもりだったけど、失敗したみたい。
ヨグノが一層心配そうな顔になった。

「大丈夫。
 さぁ、本の続きを読もうね」

本を読みながら先程のクロエ様の言葉を反芻する。

『元性奴隷だったっていうじゃない?』

『そんな人が正妃とか無理だよね?』

『リュウト様の名前に傷が付いてしまうよ?』

・・・・・・その通りだと思う。
側にいてほしいと言われて。
側にいたいと思って。

もしかして僕はものすごく安易に結婚の約束をしてしまったんじゃないだろうか?

『どうやってリュウト様に取り入ったか知らないけど』

本当に、何故リュウト様は僕を好きになってくださったんだろう?

ひょっとして、僕・・・・・・
リュウト様を誑かしたんだろうか?
リュウト様は出会った時怪我をしていて、僕がその看病をしたと言っていた。
その時に、関係を強要した・・・・・?

リュウト様は優しい人だ。
僕が無理矢理したことでも、受け止めてくださったのかもしれない。
責任を取ろうとしてくださったのかもしれない。

グルグルと思考は回っていく。


僕は・・・・どうすればいい?
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