もしも赤司様に成り代わったのに女の子だったら

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その後、伊月さんはすぐに戻って来た。




「はい」



お茶を手渡され、伊月さんがさっき座っていた場所に座る。




「ありがとうございます」




鞄からお財布を取り出すと、伊月さんに止められ、いいよいいよと言われる。




「ほんとにいいからさ」




少し困ったような顔で伊月さんはそういった。




こんなに色々してもらって…。




そういえば、さっきの助けてもらったときのお礼も言っていなかった。




「言うのが遅くなりましたが、先ほどはありがとうございました。」




伊月さんに向き合って頭を下げる。





「いや…そんな当たり前のことをしただけだから」




気にしないで欲しいと伊月さんは言った。





「それに敬語じゃなくていいよ。」




「いや、でも…」





伊月さんはボクより先輩では…。


と、口ごもる。




伊月さんは黙ってボクを見ている。




いや、でも…ここまで色々してもらったのに、ここで断るのは…。





「分かった」





敬語をとって普通に話し、伊月さんをしっかり見た。



彼は嬉しそうに笑っている。



それを見てボクもなんだか嬉しくなった…










のと同時になぜか心臓がドキリとした。



思わず、心臓あたりに手をもっていく。





「どうかした?」





不思議そうな顔で伊月さんがボクを見る。




「いえ、なんでも」




緩く首を左右に振りながら言った。



今はもう特になんともないようなので気にしないことにし、手を心臓の辺りから下ろした。













まあ、それからはのんびりとそのまま色々話しをした。





学校のことや趣味、など話した。



勿論、男装の件は隠してだが。




部活の話題になってバスケのことが一番盛り上がった。




バスケの話に盛り上がったのと、それに同じポジションだった、ということがプラスされたからかもしれない。





こういう場面ではこうしたほうがいい、

いやこのほうが〜



みたいな話だったり、バスケの選手についてとかだったり。月バスについてだったりとか。




キリがいいところまで話し終えてから、ふと空を見上げる。




もう空がオレンジ色だった。



話が盛り上がり、気がついたらだいぶ時間が経過していたようだ。




「…くしゅっ」




くしゃみがでた。



夏前とはいえ、少し周りが冷えてきた。



そのくしゃみに俊さんは、はっとしたように上着をボクの肩にかけてくれた。



温かい。



俊さんと言っているのは話しているうちに伊月さんじゃなくていい、と言われたからだ。




「でも、俊さんが…」




寒いだろう。そういって


返そう、とすると




「いや、いいよ。」




俊さんが手で遮った。そのあと少し照れながら、




「女の子は体を冷やすと良くないよ」




そう言ってはにかみながら笑った。



そこまで言ってくれるなら借りようかな。



それにボクの基本扱いは男なので、女の子扱いなんてされるはずもなく、こう女の子扱いされると…なんだか照れる。




「…ありがとう」




お礼を言いながら着る。やっぱりボクより俊さんは身長が高いので上着は大きかった。



着ると、肌寒かったのが消える。思わず、ホっとする。



それを見計らったように俊さんが言う。




「そろそろ帰ろうか、送っていくよ」




勿論、断ろうと思ったのだが。



「いいからいいから」











この後、俊さんに押し切られ、

帰りの道のりを、二人で話しながらボクの家の近くまで送って行ってもらった。







余談だが、

…家の近くまで、というのはボクの家は少々大きいので驚かせてしまうと思ったからである。

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