他SS

□黒月L
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『人間椅子』

今日月は、夕暮れの空き教室に、Lを呼び出すことに成功した。
17:00ぴったりに、彼は来るはずだった。
月は、Lがうっかり座ってみたくなるような、上質なソファーを持ち込み、クッション材を外して、自分でその中に潜んだ。体がよじれ、少し辛かったが、今から訪れる快楽を思えば、それは苦痛でも何でもなかった。
がらりと引き戸を開ける音が聞こえる。そして来訪者は、すぐに引き戸を閉めた。
(来た。)
ぺたんぺたんという、湿った足音が、徐々に近付いてくる。月は胸の高鳴りに必死で耐えた。
(駄目だ。まだ笑うな。)
足音は、月の潜むソファーの前で止まったようだった。
(いいぞ!そのまま座れ!座るんだ!!)
一呼吸置いて、肘掛に手をかける気配を感じた。次いで、座面にゆっくりと体重が掛けられる。月は額の辺りにその重みを受けた。
(これが、流河の臀部・・・ああ、この温かさ!)
続いて、両足を乗せたようだった。月の頚部に、その踵が食い込んだ。息が詰まったが、月はむしろ、その幸福感で窒息しそうだった。
(流河の踵が・・・。もっと、もっとその足で僕を蹴ってくれ!)
そのときがらりと大きな音を立てて、引き戸が開かれた。
「ワタリ!今すぐそのソファーを、ゴミ捨て場に!」
(りゅ、流河?)
「はい。」
さよなら、新世界の神!
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