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□2008年火村有栖誕
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でも、大切だよね。









ありきたりな言葉










ぐぅぅ、と唸るおなかに火村の眉尻が下がった。エヘ、と笑ってごまかすが火村はまったく、と言って立ち上がる。


「なに?なに?」


「晩飯作るんだよ。いらねぇのか?」


「い、いる!」


優しい。みんなの知らない火村の一面である。料理がうまい、も。皆が知らないそんな火村の事を知るたびにうれしくて仕方がなくなる。


「何食べたい…って言ってもある材料でな」


「ラーメン!」


はいはい、と言いながら火村はインスタントのラーメンを取り出す。ザクザクと手際よく野菜を切っていく彼の手を見ながら、なんだか幸せだな、なんてありきたりな事を思った。


「どうした」


「いや、幸せだなって」


素直にそう言うと火村は照れたのか馬鹿、と言って僕をあしらった。最初の頃はこんな言い方をされたら怒られてる、と少し悩みもしたが、今となってはただ照れているようにしか見えない。


「なににやにやしてるんだ」


「いやぁ…えへへ」


僕の頬をつねる火村もどことなく楽しそうだ。仲良くなったな、と思えるこの瞬間が僕はすごく好きだ。


「アリスはさ」


「ん〜?」


「すごいな」


予想外な言葉に首をひねる。何が、と聞くと火村は後頭部をぼりぼりと掻きながら何でもない、と言った。でも気になるものをそのままに出来るアリス様ではない。ナニナニ!と喰いつくと火村は観念したように口を割った。


「なんでも素直に言えて、凄いな」


「素直?」


「俺は言えないな、楽しくっても楽しい、なんて。幸せでも、しあわせ、なんて」


そう言う火村の横顔はどこか寂しそうで、僕は思わず手を掴む。料理中の火村は少しだけ驚いた顔をした。


「ふふふ、火村ってば」


「な、何だよ」


「幸せでも幸せって言えない、ってことを言えるんやないか」


「は?」


「だから、君も幸せって思える瞬間があって、でもそれをただ口にできなくって、もどかしくって。十分やないか」


僕がそう言うと火村はつかんでない方の手出僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。子ども扱いされてるみたいで面白くないけど、火村が楽しそうだからよしとする。


「本当に面白いよアリスは」


「面白いなんてありきたりな言葉だと思ってたけど、君に言われると嬉しいもんやな」


そう言った瞬間に火村がちょっと頬を染めたのがうれしくておもしろくて僕は彼に飛びついた。やめろ、と言いながらも引きはがそうとしない火村を、今日の麻よりも好きになっている自分に気づいた。


しあわせとか、楽しいとか、面白いとか。どんなありきたりな言葉でも良い、大事な人に大事だと伝えるのは、本当に大切なことだと思った一日だった。










END.









―――――――――――――――――
にゃ〜〜〜
なんだこの話^q^
書いてる自分が恥ずかしい

学生な二人

20080424#

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