企画倉庫

□2008年火村有栖誕
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これだけは言えるよ。









あなたがいたから










重なっている資料に溜息を吐いたのは俺だけでは無かったようだ。それも当たり前で、これだけの資料をb必要とするようなレポートをぎりぎりまでやっていないのは向かいに座るアリスなのである。


顔をしかめさせてレポートに励む姿は可愛いのだが、こんなにも切羽詰まった状態になるまでほおっておくことは感心できない。


だが小言を言えばただでさえ眉間によっているしわを増やすだけである。静かに見守っててやる事にしよう、と決めたのだが、アリスの筆もなかなか進まないようである。


「…さっきから固まってるぞ、アリス」


「ん…」


少し下がった瞼に危機を覚え頭をひと叩きしてやる。はっと目を覚ましたアリスは申し訳なさそうに俺を見た。


「ごめん…」


「わかってるならしっかりやれ」


そう言ってコーヒーを出してやるとアリスは申し訳なさそうに頭を掻いた。


「でも、も…頭が霞みがかってて…」


「レポート提出まであと三日あるからって気ぃ抜いてるんじゃねーぞ」


そう言う頃にはアリスはうとうとと眠りの世界に船を漕ぎ始めていた。こうなったアリスに何を言っても仕方がない。


毛布をかけてやりながら、レポート提出前日にまた俺が大変な目にあうんだろうな、と思って大きな溜息が出た。だとしても、アリスが頼って来るのが俺であることは嬉しいに違いない。


次の日の朝、アリスはものすごく焦って、そして申し訳なさそうに謝って来た。それもそうだ、自分から頼んできながら寝てしまうのだから。


「ごめん…」


「お前も、やるならやるで寝るなよ」


そう言うとアリスは可愛い顔を寂しげに歪ませてから、すまん、と言葉尻を消しながら言った。


「でも、君がいたから安心して寝て舞うんやと思うんや…」


「それは何だ、俺がいたから油断するって言ってんのか」


「ちがくてー!!」


困ったり嘆いたりするアリスを見て内心ほくそ笑みながらも、一回くらいこうやって叱っておかないと、なんて親心にも似た錯覚を起こしんながら叱咤をくれてやった。


「ごめん…君に頼りすぎやんな」


反省したか、と思いつつも、もう君には頼らない、なんて言い出したらどうしようなんて思ってしまうのだから俺も大概駄目な奴である。


「でも、君しかおらんからさ…」


そう言われて気がよくなってしまうのだから俺も可愛い。わかればいいよ、と言って頭をなでた時のアリスの笑顔に負けて、レポート完成まで面倒見てやる、なんて安請け合いしてしまった自分を今日から二日間悔いる事になるなんて思いもしなかった。


だって、眠たそうにうとうとと眠たげな可愛いアリスを見なければならないなんて、俺にはうれしい事でもあるが、苦しい事でもあるに違いないのだから。










END.










――――――――――――――――
…あほやんなぁ……

学生な二人〜

20080227#

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