企画倉庫

□2008年火村有栖誕
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放してくれ、なんて今さら言われても。










無理なお願い










「火村、誕生日おめでとう!」


その言葉とともにあらわれたアリスの手には大きな箱が載せられていた。もしかしなくてもケーキだ。まったく、こいつはいつも人の誕生日をダシに自分が食べてみたいケーキを買ってくるのだ。


「で、何だこの蝋燭の量は!」


「34歳分って言ったらくれた」


恥ずかしくないのだろうかこいつは!呆れる俺をよそにずかずかと上がり込んで勝手に座るアリスに大きくため息を吐く。もうこいつに何を言っても仕方がない。


「で、プレゼントは、わ・た・し☆」


そう言ってウインクを飛ばしてくるアリスにあきれんばがらも、それもいいな、と思いアリスを担ぎあげる。


「え?え?なになに?」


「今日はここから動くなよ、俺のプレゼントさん?」


そう言って布団の上に投げるとアリスは動揺した顔で俺を見上げた。戸惑うアリスを押し倒す。


「ちょ、火村さん?」


「今日一日ここから出るなよ、アリス」


「は?」


「プレゼントなんだろ?」


そう言ってにやりと笑うとアリスは顔を真っ赤にして俺に掴みかかって来た。だがそこは俺とアリスの力の差、簡単に足をかけて再び布団にひれ伏せさせる。


「ちょ、っと!」


「出ちゃ駄目だぞ、アリス」


「ぎゃーーー!痒い!!台詞が痒いわボケ!」


失礼な事を言ってくれるではないか。でも何だかんだ言って布団から出てこないアリスを横目で見ながら、アリスが持って来たケーキを開ける。


それを切っているのをじぃっと見つめるアリスが可愛くて思わず笑みが零れる。皿に盛ってアリスの前に差し出してやると、アリスは眉間にしわを寄せて手を伸ばした。


「なんだ、疑り深い顔して」


「あーんしろ、とか言うのかと…」


「アリスがそんなに言うならしてもらおうじゃないか」


墓穴を掘った事に気がついたアリスがあからさまに嫌そうな顔をした。アリスは少し考えた後、なんとケーキを手づかみでとった。


「アリス?」


「くわしたろうやないか」


ケーキを口に含んだアリスは、ヤケクソとしか言いようがない程俊敏な動きで俺を押し倒した。唇越しに伝わってくる甘い味にめまいがした。


「どうや、美味かったかどあほぅ!満足か!」


「…アリス……」


え、と固まったアリスを再び自分の下に組み敷いてもう甘くない唇にキスをする。放してくれ、なんて今さら言われても、そんなの無理なお願いだからな。そう言うとアリスは真っ赤になって俺をにらみつけた。










END.










――――――――――――――
うーーーーん、微妙


大人なふたりでした。
20080419#


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