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□2008年火村有栖誕
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言ってなんて、あげないけど。
めいっぱい
「…なんちゅー恰好してんねや」
「格好良いだろう?」
大阪府警に着いてみれば、不可解な格好をした火村が私を迎え入れた。いつもの白スーツ、黒シャツは後ろに干されている。
火村が着ているのは、大阪府警のイメージキャラクターがでかでかと描かれたTシャツと、警官服のズボンだった。
「…なにがあったんや」
「ちょっと汚しちまってな。いいから座れ。遅かったな」
「ちょっと道が混んでて…ってまぁTシャツなんはええけど、ピンクはないやろがピンクは!」
「それは森下君に言ってくれ」
森下がこの衣装を持って来たらしい。あいつ、火村を尊敬してるふりして実は何かと嫌がらせしたいとか思ってるのではないんだろうか。いやいや冗談だが。
「早く読め」
がさがさと積み重ねられていく事件資料に手を伸ばしながら火村を盗み見る。ピンクだろうがキャラクターだろうがちぐはぐだろうが格好良いのだから仕方がない。
読み進めている資料の合間合間に火村が新しい情報やら火村の解釈などを入れていく。見ていないのに私がどこを読んでるのか的確に言い当ててくる火村にもう驚きすら感じない。
火村は何度も読んで資料の構成を覚えていて、そして私の読むスピードも分かっているのだから驚くことは何もない。
読み終わったころに火村が私の手から資料を引き抜。これもまた絶妙なタイミングで呆れてしまう。
「なぁ、君その恰好でで歩くんか?」
「なんだ?俺が目立ったらいやなのか?嫉妬するなよ」
「するかい」
「俺を見る周りの目に、だよ」
「じ、自意識過剰……」
Tシャツを脱いで黒シャツに着替える火村を横目で見ながら事件資料の写真を眺めた。直視しずらいその被写体に目を細める。この時間だともう遺体は撤去されて実物は見ないで済みそうだ。
「安心しろ、もう被害者は現場には居ないよ」
「心を読むな…いっそ警官服着て忍びこめば目立たないんと違うか」
そう言いながら扉に向かう私の肩にそっと手をあてて火村が小さく笑った。その表情に目を奪われる。
「そんなコスプレまがいのことするなら、俺はアリスが着てる方が楽しいね」
何が楽しいんだ何が!怒るのも下らない気がして私は顔をそらして先に部屋を出た。どんな恰好でもいいけど、やっぱり火村はこうやって気障に微笑んでる姿が一番だと思った。
私がめいっぱいおしゃれしたって恰好よく決めたって、火村のその小さな微笑には勝てないのだ。こんなこと言ったら図に乗るから、言ってはあげないけど。
END.
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大阪府警のキャラクターってなんでしょうね〜
東京はピ○ポ○君ですね^^
20080417#
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