小説集

□雪の降る街
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序章 猫と少女と拳銃と

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 駅のホーム。
 舞い散る雪と灰色の空。

 季節はもう冬だ。秋口から一気に駆け足して、急に寒くなった。
 ――たたん、たたん。
 後発の列車がゆっくりと滑り出す。
 スチームが機関車の汽笛を鳴らし、煙突から吐き出された黒煙が空へと昇ってゆくと、やがて空の灰色と混じり合い、そして消える。

 立ち止まる。白い息がフィルムの逆戻しのようにクルクル大気に溶ける。
 ――たたん、たたん。
 凍りついた時が、動き出す。

「――――」
 「――――」
「――――」

 人々の活気が構内に広がって、音の奔流が耳の横を流れてゆく。
 俺は長外套の襟を寄せると肩を落とした。ため息が宙に踊る。先ほどまで暖房の効いた車内にいたものだから、頬に当たる冬風が余計に冷たく感じた。


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