華空小説=モノクロ

□カノジョ
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暑い陽差しの中、お母さんと一緒に公園で遊んでいた。


大好きなピンク色をしたボールを投げたり蹴ったりして遊んだ。



「はーちゃん、今度は取れるかな?」



お母さんはボールを私に向けて軽く投げたつもりだった。


もちろん、私にはとても難しくそのボールを取る事は出来なかった。


思った以上に転がるボールを私は追いかけた。


ボールは知らない男の子達の方へ転がり、運悪く一人の男の子がボールを勢い良く蹴ってしまった。



「あ!ボール!」



慌ててボールが飛んでいった方向へ走る私。


後ろでお母さんが必死に叫ぶ声も追いかける足音も私には聞こえない。


辺りに響く車のクラクションで私は気がついた。


私の居た場所は道路のど真ん中だった。


あっけに捕られた小さな私はそこから逃げる事も出来ないでいた。


突如感じた浮遊感。


本当に空を飛んでいた。


青い空に白い雲。


そして真っ白の髪の彼女。


私は彼女に抱え込まれていた。


歩道に着地し、そっと私を降ろす。



「人はとても脆い生き物。
十分に未来がある君が死んでしまったらマリアが気の毒になる。」



優しく微笑彼女はまるで天使の様に思えた。



「セディア、さっさと行くぞ。」



今度は真っ赤な髪の彼が電柱の天辺から彼女に向かって言う。



「解っているよ!…いいかい?君は何時か私が迎えに行くからね?
白馬に乗った王子様なんて来やしないんだから。」


私の頭を撫でて、彼女は彼の方へ飛んでいった。


真っ黒な羽と共に。


井藤葉菜(イトウ ハナ)、8歳の夏。


初めて『悪魔』と出会った日。
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