Long stories
□臨界の華々 1.花瞼が開くとき9
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「さぁ、どうぞ」
牢屋の檻を開け、出るように促される
男が手にする、少年の置いていった灯りよりも光を発する"何か"に目が眩む
何度も瞬きをし、壁伝いに立ち上がった
「おや、縄を解いたんですか?」
「ご飯出されて手を使えないをじゃ、しょうがないじゃない」
橘が何か言う前に、早口気味に呟いた
「逃げようとは思わなかったんですか?この牢屋には鍵も掛けなかったんですから」
「逃げたって、捕まるでしょ?」
森で見たあの身のこなしを見れば、体力も瞬発力も何もない私には到底かなわない
喧嘩腰に問えば、物騒な答え
「不正解。"捕まる"じゃなくて"殺される"」
いつの間にか、隣に立っていた 見た覚えのある女の子
森でこの男と一緒に私達を捕まえたあの子だ
そして、何故か、
私は女の子と手を繋いでいた
「逃げなかっただけ、お利口さん」
「橘、食事と一緒にそこの火も片付けておいて下さい」
「…私も、」
"手伝う"
そう言って動き出した体は、女の子に繋がれた手であっさり止められた