Long stories
□臨界の華々 1.花瞼が開くとき6
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「…女の子、生かして帰れば 椿様、喜ぶ?」
「大変喜ばれるでしょう、今問題になっている事を全て解決してくれるでしょう、あの子猫さんは」
柔らかな微笑みを向ける男と無表情で途切れ途切れに話す少女
男の笑顔が、怖い
音もなくにじり寄ってくる二人
ちびっこは私を守ろうとしているのか、必死に睨み続ける
「…さて、少年。君がここ最近森や街を荒らす、問題になっている困った子供ですね?」
「俺は何も荒らした覚えねぇ!さっさと帰れ!!」
「街に出て、店荒らす。十分」
口を閉じ、ぎりぎりと歯軋り
それは きっと、図星だからだろう
「記憶ない、名前ない でしょ?」
驚きは私とちびっこ、二人同時
どうして、何で、知っている?
このちびっこ以外にも記憶も名もない子供がいるのだろうか?
ぐるぐる頭で駆け回る言葉に気を取られていると、一陣の疾風
「申し訳在りませんが、名のない子供は私共の所で預かることになっておりますので」
すみません、そう聞こえたのは すぐ近く
うっ…と苦しそうな声を上げ、目の前のちびっこは膝をついて倒れた