Long stories

□臨界の華々 1.花瞼が開くとき5
1ページ/4ページ





「名前ないって…まさか、」

そんな…ありえない、でしょ?



「俺、名前も何も覚えてねぇんだ。いつからここにいるのかも親がいたのかも分かんねぇ…」


しょんぼりと、落ち込んだ表情を見せる

潤みだす澄んだ瞳

どこか、目を離しておけない 手放したくない そんな感じ


…あぁ、そうか 私は1人納得する


離れ離れになった、あの弟の姿が重なるからだ





「…よし、あんたが忘れた事思い出すまで一緒にいる」

「えっ…ほんとっ!?」



私がそう断言した途端、表情から瞳まで、全てが明るくなった


どうせ、今の現状じゃ 私の戻りたい場所には戻れない

だったら、戻れるようになるまで一緒にいてもいなくても 変わらないんじゃないだろうか?



「よし、まずは街かどこか 広い場所に行こう」



小型ナイフをジャケットのポケットに入れ、私は意気込んだ






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ