Long stories
□臨界の華々 1.花瞼が開くとき1
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桜が散り始めた今日この頃
…や、学年が変わったあの頃の初意など消え失せた 今日この頃
私は窓際の席で日溜りに包まれ、ウトウトしていた
「えー、ここに―――して、3を代入し―――するとだな…」
カツカツと忙しなく響くチョークの音に、先生から書き加えられる数式達
それらを、必死に頭を上げ下げしながらノートをとる生徒達
お昼直後のこの時間、そんな溌剌としていられない
けど、残念
そう思っているのは私だけ
ぐるり と、まわりを見渡しながらそんなことを考えた
「…水無――無月―――」
…あぁ眠い
ぼんやりとノートを眺めながら欠伸を噛み締める
重たくなった瞼を逆らうことなく閉じようとした、その時
「水無月菖蒲!!」
「…へ?」
先生の怒鳴り声と私の間抜けな声
不意に頭を上げ 閉じそうになっていた目を見開けば、教室中の顔という顔がこちらを見ていた