Long stories
□臨界の華々 1.花瞼が開くとき7
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「ごめんごめん…で、ここは刑務所か何か?」
「だから知らねぇって!!」
「…元気だねー、あんたら。緊張感って言葉知ってる?」
自然と入ってきたちびっこ以外の声
気付けば檻の外にほのかな光が漂っていた
「ねぇちゃん、目ぇ覚ましたんだ?良かったな」
「だーかーら、ねぇちゃんじゃねえよ!!」
「"ねぇちゃん"って呼んでんだろー、お前」
「俺、名前知らねぇから"ねぇちゃん"って呼んでんの!血の繋がりはねぇよ!!」
ぎゃいぎゃい騒ぐちびっこと灯りを手にやってきた少年
顔見知りなのだろうか?
ほのかに明るくなり、まだ目が慣れずに薄目で周りを見ると、あることに気付いた
ちびっこは手を縛られていない
「ちびっこ…あんたさ、縛られてないなら私の解いてよ」
そう声をかければ、思い出したと言わんばかりの顔で振り返ってきた
「あ、そっか。ごめ…」
「橘、その女には何もするな」
先程までの陽気な声はどこへやら、冷ややかな声が響いた
縄を目前にしていたちびっこの手は ピタリと動きを止めた
「でも…」
「こいつはお前とは違う、例外だ。お前は上に戻れ」
命令だ、その一言で口を開きかけたちびっこは何も発する事無く口を閉じた
渋々立ち上がったちびっこは、憎しみの目を少年に向けながら呟いた
「…俺、ねぇちゃんに飯持ってくる」
そして、ちびっこは駆け出していった