Long stories
□臨界の華々 1.花瞼が開くとき5
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恨めしそうにポケットを見つめる目が私の顔まで上がる
私と目が合うと、急に表情を曇らせた
「あー…ねぇちゃんは人がいるとこ、行かねぇ方が良いと思う」
「…何で?」
くるくる回りながら落ち続ける枯れ葉
それ以外 この静寂の森の中を動くものはない
しばらくの沈黙の後、ちびっこは口を開いた
「今の魔王…リフィル様は 目も髪も黒いんだ」
「…だから?」
日本では、それは普通
それとも"この世界"では違うのだろうか?
「童話でだったら聞いたことあるけど…リフィル様以外、たぶんいないと思う」
「…へぇ」
それは…困った
容姿で問題なんて、いままで考えた事もなかった
しかも国…いや、世界かな?
その王様だけが黒髪黒目、パッと私を見れば誰でも"その人"だと誤解するだろう
考えもしなかった状況に頭を悩ませると、疑問が浮かび上がった
「ちびっこ…あんた、なんでそんな事知ってんの?」
記憶は全部ない、そうじゃないの?
そう聞けば、ポカンとした表情をされた
「あれ、何でだろ…」
「自分の事は何一つ思い出せないのに?」
「国のこと…ふつーのことは、覚えてんのか、俺…?」