中編
□英雄色
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サァッと暖かい風が優しく包み込むかのように吹き、桜の花弁を散らせ、舞うように通り過ぎてゆく。
ただ、ボーッと窓から外を眺めていた。
特にやることが無い。と言うか、いつもの事なのだが今日は特に何もする気になれなかった。
自分の回転する社長机の椅子に腰掛け、背もたれに肱をつきながら、ただ、何も考えないで窓から外を眺める。
何故か、不思議だった。
こんな事をしている自分が。
昔…そう、昔なら、こんなこと出来るはずも無かったと言うのに。
自分が子供の頃は、よく桜の木に登り、空を眺めてから木の枝に寝転がって昼寝をしていた。
当たり前だったんだ。あの頃は、この平和と言う日常が。
だが、時は流れ戦争と呼ばれる戦に俺たちは出た。
ただ、仲間を死なせぬ為に、死に物狂いで戦った。
──そこからだった。俺が人間という本性を知ったのは。