the transient world
□ゴールからのスタート
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「せんせ〜、一緒に写真撮ろ!」
「私も、私も!」
「ああ、待て待て。順番だからな?」
生徒に囲まれ、写真をせがまれる鵺野。
そんな鵺野を名無しは離れた場所から、カメラを握りしめ見ていた。
今日は名無しを含め、ぬ〜べ〜クラスの郷子たち、そして同学年の子たちの卒業式。
卒業式も終り、最後の先生の話も終り…。
そのまま下校となるのだが、卒業となるとそれで終わるわけではない。
恒例の先生との思い出写真を撮るという行事が一つ残っていた。
そのため、昇降口から出た名無しは人の多さに絶句する。
目の前には自分と同じように、先生たちの写真を撮るため、順番合戦をしている卒業生がわんさかいたからだ。
「(私もぬ〜べ〜と写真撮りたいけど、あれじゃ無理だよね)」
女子生徒に引っ張られ、写真を一緒に取ってくれと言われている鵺野は自分の恋人の鵺野ではなく。
先生としての、ぬ〜べ〜としての顔だった。
今、写真をとってくれといっても迷惑になるだけ。
教師と生徒の関係で恋愛をしている名無しはよく理解していた。
とわ言え、順番は待っていればまわってくるはずだ。
それまでの時間、他の事で時間をつぶそうと名無しは卒業生たちの華やかな声が溢れる校庭から静かな校舎の中へと足を進めた。
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