the transient world
□絡まる赤い糸
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12月24日とはクリスマスイブ。
この聖なる夜に、とある不幸が二人を襲いました。
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首に巻いたマフラーに口を埋めて、寒さにぶるりと身体を震わせる。
通り過ぎていく人たちは皆、カップルばかりで数分後には自分もあのようになるのだと無意識に笑みを浮かべた。
名無しの担任であり、恋人である鵺野との初デート。
高校生の名無しが初デートではしゃがないはずがなく、待ち合わせ五分前には待ち合わせ場所である場所に居た。
クリスマス一色にされた町並みは、イルミネーションで光り輝き、幸せそうな人たちの笑顔で包まれている。
12月の寒さは、肌に刺さるように寒いが名無しは鵺野の事を想うと心から身体が暖かくなっていく気がした。
「(まだかなぁ…先生…)」
はあ、と寒さで悴む手に息を吹きかける。
時計を見ると待ち合わせ時間から10分も過ぎていて、ふと胸に不安が過った。
「ほら、やっぱり名無しちゃんじゃん!」
「ほんとだー!」
名無しの冷え切った耳に、聞きなれた声が聞こえてきた。
振り返るとそこには可愛らしくツインテールを揺らす少女と、その少女と手を繋ぐ少年の姿。
そしてその後ろにはいつものメンバーが顔をそろえていた。
「何してるのー?あ、もしかして彼氏と待ち合わせ!?」
彼氏、と言われた瞬間――鵺野の顔が脳裏に浮かぶ。
しかし、教師と生徒の関係上ばれてはいけないと、名無しは咄嗟に首を横に振った。
「ち、違うよ!郷子ちゃんたちは…?」
「今から皆とパーティー。名無しちゃんもこの前誘ったじゃない」
「あ…そだったね」
誘われた記憶はある。
確かその日が今日で、鵺野との約束があり断ったのだ。
「(私が誘われてるとなると、先生も誘われたんだよね…?)」
「名無しちゃん?」
ならば、彼がデートに遅刻してる理由はまさか郷子たちに捕まったのでは?などとも考えるも名無しは聞かずにはいられなくなり、郷子に問いかけた。
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