the transient world

□お金じゃ買えないもの
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※ぬ〜べ〜クラス全員、高校生設定です。
つまり、ぬ〜べ〜は高校の教師という事になります




「うっせえブス!」

「な、何よ広〜!」


目の前で痴話喧嘩をするクラスメイトを目にして、秀一は溜息をついた。

なぜ、好きな人にわざわざ嫌われるようなことをするのか…、広の言動を見て疑問を抱いていたからだ。

それと同時に呆れてもいた。

優秀な成績。
裕福な家庭。
綺麗な容姿。

何をとっても劣らない自分。
はっきりいって、欲しいものがあればあらゆる手を駆使して手に入れたし、欲しいと思えば独占欲は人一倍多かった。

恋愛に関しても同じだ。
気にいった女性がいれば必ずしも手に入れる。

優しく接して、有り余ってるお金を使いディナー、デートに誘い、美しい容姿で魅了する。
この行動を規則的に繰り返せば、堕ちない女はいなかったし、みんなすぐに自分から心を開いてきた。

最初は捻くれていた女もそうだ。
みんな簡単に堕ちていく。

だから秀一は広の行動に呆れるのだ。
好きだと思うなら何故、悪口を言い自分の立場をわざと不有利にさせるのだろうか、と。


「(まあ、僕には関係ないけどね…)」


しかし、秀一は疑問を抱きながらも、そんな広を羨ましくも思っていた。

広があのように郷子に好き勝手言えるのは二人の愛が本物だからだ。
何人もの女性を落としてきた秀一だが、実際に女性を好きになったことはなかった。

だから気づいたのだ、好きな人ができて広たちがとても羨ましい関係だという事に。

愛は金じゃ手に入らない。
たとえ見た目がかっこよくとも、頭がよくても。

それを気づかせてくれたのは自分であり、実感しているのも自分なのだから無情な世の中である。

そう、目の前にいる天使は絶対に僕にふり返ることはない。


「秀一くんっ!」




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