Novel

□Happy Halloween!
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スマイルが去ってから、六はMZDを引きずって、一京の寺へと向かっていた。
いい加減、この恥さらしを街中に置いておけないと思ったのだろう。

「六〜。苦しいんだけど…」
MZDの抗議の声を無視して六は、石段を登る。
「痛い痛い痛いッ」
MZDはそう叫ぶが―――無視される。
「痛い痛いッ。ゴツッて聞こえるんだけどッ!」
石段を登り切った六は、MZDの首根っこから手を離した。
「ぐふっ。」
ゴスッという鈍い音が響き、MZDは再度気絶した。

「…落ちたか。」
六はそう呟くと、MZDをとある部屋に連れて行った。


†††

MZDが目を覚ますと、目の前に六の顔があった。
「目、醒めたか。」
「ろ…六…?」
MZDは狼狽えていた。何故ならば――――――
「此処は一体…??」
彼の回りには、大量のパンダが置いてあったのだ。
「――――お前がパンダの格好をしていたから連れてきてやったのに、不満か?」
頑張って冷静さを取り繕うとしているいが、ヘッドホンから覗く耳は真っ赤だ。
「え…?ということは、此処は噂の…!」
よく見れば、自分のプレゼントしたパンダも飾られているではないか。

「パンダ部屋!!?」
「ぅ…噂とは…?」
六はどうやら知らないようだ。
「いや、六は一京の寺の一角にパンダ専用の部屋を持っているという噂が。」
「…知らなかった。まさかこの部屋のコトが公になっているとは…」

「――まぁ、とりあえず。どうして俺を此処に?」
MZDの当然なる質問。
「いや…その…それは………」
六は耳まで真っ赤にして赤面し、そっぽを向く。
「そろそろ、俺の秘密の一つぐらい知ってても良いかと思っただけだ…ッ!」
小さく、呟く。
「え?六、今なんて…?」

「知らんッ。もう二度と云うものか!」
そんな六を、MZDは少しキツめに抱き締める。
「なッ……んっ!?」
驚いた六が振り返った瞬間、MZDは一瞬だけ、唇を重ねる。
「てめっ…何しやがんだよ!?」
MZDは、悪戯が成功した子供のように微笑う(わらう)。
「えー?何って…キス?ホラ、俺等恋人―――」
其処まで言った瞬間、六はMZDを刀の峰で思いっきりぶん殴った。
「痛〜…。」
MZDは涙目で六を見る。
「―――――馬鹿。」
少しでも恥じらっていれば可愛らしく、一件落着なのだが、六に限ってそんなことはあり得ない。
きっぱり、はっきりとそう云った。
「――そんなツンデレな六も愛し―――ごふッ」
MZDの腹部に、刀の柄がめり込んだ。

「そうそう。あと、このパンダの着ぐるみは貰うからな。」
六はそう云うが否や、即座に意識を取り戻しかけたMZDの着ぐるみを引っぺがし、ファ○リーズやアルコールで殺菌消毒をした。
「ぅぅ…ヒドい…」
MZDはまた、ぱたりと倒れた。
「ふぅ…仕方のない。」

六はMZDを自室の布団に寝かせた。
「―――今日は楽しかった。有難う。」
六はそう、人知れず呟いた。





追伸。
MZDの寝顔を、六がしっかりと観察していたのは秘密である。

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