Novel

□*tea time*
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「ふふふ…この薬さえあれば…」

暗い実験室の中で、黒い笑みをするジズ。
こぽこぽと音を立てるピンクの液体を、そっとかかげる。
其れをガスバーナーで熱し、静かに振る。
ピンク色がだんだん薄くなり、やがて消えた。

「今度こそ、リデル嬢を我が物にッ!」
高笑いが、大きな屋敷に高らかに響いた。

「リデル…ジズの物にされるぐらいなら、私が先に貰ってあげます…!」
こちらは、キルの私室。必死で何かを作っている。
どうやら、クッキーのようだ。その生地の中に、さらさらと白い粉を入れた。
「ジズの部屋からパクって…もとい、頂いてきた超強力睡眠薬で、リデルが眠っている間に…!」
よからぬ妄想をしながら、キルはクッキーを作り続けた。






翌日、リデルの家のポストに、白い封筒と、黒い封筒の2通の手紙が投函された。

「あら…黒さんと、白さんから…。」
ちなみに。黒がジズで白がキルだ。
どちらも同じ紅い蝋で封がしてある。
どちらも、お茶会のお誘い。
嫌な予感はしたが、同じ場所、同じ時に開かれる二つのお茶会に参加することにした。







キンコーン。
屋敷に響いた、チャイムの音。
嫌な予感はしながらも、ついに来てしまった奴等の拠点。

がちゃん。どたん。ばたん。がっしゃーん。

家の中から、凄い音が聞こえてくる。

「い…いらっしゃいませ。」

ボロボロになって出てきたのは、ジズ。
後の方に、頭に花瓶をぶつけられたらしいキルが転がっている。

「あら。また喧嘩しながらお出迎えかしら?」

「えぇ。キルはまた私と貴女の中を引き裂こうとするのですよ。ほら、こんなにも私達は愛し合って――」
「戯れ言はもう良いわ。早くお茶とお茶菓子を出してくださる?その前に、上がらせて頂けないかしら?」

むくっ、とキルが起きあがる。

「私がエスコートしましょう。」


リデルは思った。
変態その弐、復活。

「遠慮するわ。お茶会の場所は大広間でしょう?場所は判っているわ。」
キルをあっさりとかわすと、リデルはすたすたと歩き出す。




「あぁ…リデル嬢は今日も美しい…。」

「気の強いリデル…あぁ。その強さが美しい…。」


リデルは思った。
お茶やお茶菓子に変な物が混ざってなければ良いけれど。
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