花紫・変異

□東方鏡映譚 仇華
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リグル・妖夢を退けた月影。だが四面楚歌に変わりはない。

真実を聞ける賢き者は――、いずこに。





現在の被害状況。
里の人間・四人。
人間・一人。
半獣・一人。
元人間・一人。

誰かが落としたらしい汚れた号外には、そう書いてある。そして。



『善意の皮をかぶった凶行! 切り裂き事件、一連の犯人は便利屋・橘洪慈月影』



見出しにこれでもかと大きく書かれたのは、自分の名前。それだけで、妖夢に斬られた傷が疼く。

(誰も、信じてはくれぬだろうなぁ……)

幸い記事には「具体的な犯行のやりかたは不明」とあり、青娥の言う聡明な者まで敵に回るには時間がある。だが。

(……そのうち、誰かが不安にかられて虚々実々を言ってしまうだろう)

あれだけ躍起になって月影を犯人にしたがっていたのだ。里の人間が正気を逸してもおかしくない。

(その前に奴をどうにかするか、あるいは味方を増やすか……。味方と言えば、この傷を治療してくれた方が誰なのかも分からん)

できれば一度青娥と連絡をとりたいが、なかなか難しいだろう。青娥なら調べものに適任なのだが。

(あと、おそらく幽々子殿はこの件から背を向けた……。妖夢殿再来はないだろう。となれば)

里に行くのは相変わらず危険だ。別の場所にいる誰かに会うべきだろう。味方になってくれそうな者と。

(……そうだ、幽香殿、あるいは霊夢殿。幽香殿はその目で見たものを信じるタイプだし、霊夢殿には巫女の勘がある)

誰かの意見に左右されない二人ならば、説明さえすれば信じてくれるかもしれない。

(幽香殿は生粋の妖怪だから奴に狙われることもあるまい。決まりだ。――太陽の畑に!)
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