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□009クリスマス
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獄寺と付き合いだして半年。ようやく半年。獄寺を好きになってからは・・・もう1年以上経つ。
やっとの想いで恋人同士になれたのにいまだ全く進展ナシ。それもそうか・・・。だって俺が獄寺を好き過ぎる。
付き合えたことが夢みたいでいまだに信じられなくて、手を繋ぐ行為でさえ緊張しすぎてスマートに出来ない。たとえ手を繋げたとしても、すぐに振りほどかれるに決まってるんだ。
「・・・・おい!!てめぇっ!!いきなり何しやがんだっ!!」
眉をつり上げて俺に叫ぶ獄寺。勢いよく振りほどいた手は一瞬にしてズボンのポケットにおさめられた。
「んな大きい声で叫ぶことはねーだろ」
「うるせぇ!!!」
獄寺はギロッと俺を睨みつけた。
(ちぇっ・・・なんだよ。手くらい繋いだっていいじゃねーか。まわりに人いねぇんだしさ)
「・・・・・獄寺のケチ」
「あ???!」
獄寺は俺の前に立ちはだかると、眉間にシワを寄せて険しい表情でさらに睨みつけてきた。
「・・・テメぇ聞こえてんだよっ。ふざけんな!外ではそういうことはしないって前に約束しただろーが!!」
それだけ言うと、獄寺はフンッと鼻をならしてスタスタと歩いて行った。いかにも不良っぽくガニ股で歩く獄寺の背中を俺は独りぽつんと見ていた。
なんだかこういう時すげぇ無性に空しくなってくるのは何でだろう?
俺って今すげぇ幸せなはずだよな?ずっと片想いしてた人と付き合えてるのに。しかも相手は男。絶対100%叶わないって諦めてたはずの恋がようやく実ったのに。
獄寺と付き合って初めてのクリスマス。今までどうでもよかったイベントがすごく特別な行事のように思えた。それなのに、なんでか心はあまり満たされていない。
本来なら今頃、一緒に過ごすであろうクリスマスのことなんか考えてウキウキしているはずなのにな。・・・・おかしい。
・・・・っていうかクリスマス一緒に過ごすのか?俺たち・・・・
そう言えばちゃんと約束してないな・・・。だって、そんな約束わざわざしなくたって恋人同士ならクリスマスを一緒に過ごすことなんて当たり前だと思ってたから。他の友達も彼女と過ごすって自慢してたし、ツナだってきっと笹川と・・・・
やばいな。もしかして獄寺なんも考えてない?むしろクリスマスのことなんて覚えてんのか???
それすら疑問だ。
その日は夕方まで部活あるけど夜は一緒に過ごすつもりで空けてたし。もちろんクリスマスイブ!!
そんで、0時きっかりにプレゼント交換。他のカップルがどういう風に過ごしてんのか知らねぇけど、俺はそのつもりでいた。
もしかして・・・・・俺はりきり過ぎ???
クリスマスプレゼントだってもう買っていた。中学生だから金も無ぇし、たいしたモンやれないけど、獄寺に喜んでもらいたくて必死に探した。安物だけどシルバーのブレス。獄寺が好きそうなデザインで俺の持ち金で買えるやつ。
プレゼントまで用意してるのに、肝心の獄寺と過ごせないんじゃ意味がない。
俺は慌てて、獄寺の背中を追いかけて肩に手をやる。