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□syk
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※R18です





「獄寺でもムラッとしたりすんの?」



真面目な顔でそう聞くと獄寺はあからさまに呆れるような表情を浮かべた。


「いやぁ獄寺ってあんまそっち系の意思表示しねぇだろ?ちょっと気になっちまってさ。獄寺でもムラッとしたり、『うわ 今すっげぇエッチしてぇえええ』とか思ったりすんのかなぁ〜って・・・俺見て」
「は?最後の方全く聞こえなかった」

いつも以上に眉間に皺を寄せ、明らかに不愉快そうな顔をする獄寺。まるで掃き溜めのゴミでも見るような眼差し。

「すっげぇくだらない上に、めちゃくちゃ気持ち悪いぞお前」

読んでいた雑誌でポカッと俺の頭を軽く叩いて吐き捨てるように言った。


(くだらなくなんかねぇよ)


獄寺はそう言うけど、俺にとっては結構深刻な悩みだったりする。付き合ってまだ日が浅いうちは特に気にもしていなかった。そりゃ常に頭ん中はそういうことでいっぱいだけど、多感な年頃だしそれが当たり前の生理現象だと思っている。だから今までは獄寺に触れたいと思えばその欲求に素直に従ってきた。


(まぁけしかけるのはいつも俺からだけどな)


付き合って初めの頃は、恥ずかしいのかそれとも嫌なのか(自分で言ってて悲しくなるけど)そういう雰囲気になると必死に抵抗していた獄寺も、最近じゃ割と素直に応えてくれるようになった。だからあまり文句は言えないんだけどさ。だけど、今まで一度だって獄寺から求められたことがなくて、正直なところ俺のことをどう思ってんだろう?と疑問に思うことがある。


好きな相手には触れたいと思うし、その人のことをもっと知りたいと思う。一度触れたらもっともっと触れたいと思う。自分が気持ち良くなりたいという欲求ももちろんあるけれど、それ以上に獄寺を気持ち良くさせてあげたいと思う。

男だとか女だとか関係ない。本当に好きならそうなるのは普通じゃないのか?獄寺は俺に対してそんなことを思ったりしないんだろうか?


「ちょ、山本、やめろって」

両手でグイグイと俺の顎を後ろに追いやって獄寺は顔を背けた。

デートというデートをしない俺たちにとって、一週間のうち金曜の夜だけが唯一2人きりで過ごすことのできる貴重な時間なわけで。

・・とは言っても、俺の家だから下には親父がいるしあまり大きな物音は立てられない。だから出来るだけ慎重に触れようとするも、のっけから全開で拒絶され今に至る。


「・・・・今のすげぇ傷ついたんだけど俺・・・・」
「う、うるせぇ。おとついもしただろうがっ」
「学校だったから服脱げなかったじゃん」
「やることやってんだから一緒だろっ」
「全然違う!服着たまんまトイレですんのと、ちゃんとしたベッドで裸で抱き合うのとでは全然違う!!!」

思わず拳に力が入る。獄寺は軽蔑するような目で俺を見た。

「ンなこと必死に力説すんじゃねぇ」

俺の腕の中から器用にすり抜け、ベッドの上に寝転がって雑誌を読み始める。

(・・・拒否られた。そんなに俺とすんのが嫌なのかよ?)


我慢できずに学校のトイレで欲求を吐きだすみたいにした行為は、もしかして獄寺にとってはただの苦痛だったのかもしれない。

だけど仕方ないじゃないか。体育の着替えの時にちらっと見え隠れする透き通るような白いわき腹や、後ろから飛びついたら折れるんじゃないかと思うくらい細い獄寺の背中を一目見ただけでもう俺は我慢できなくなる。好きな奴が目の前で着替えてんのに平然となんかしてられない。獄寺に変なフィルターがかかっているせいか、クラスの奴らにも(俺の)獄寺をまじまじと見られているような気がして、いてもたってもいられなくなる。

それを獄寺に言うと『お前ほんとの馬鹿だろ』って一言・・・。

獄寺が俺に欲情したりすることってあんのかな?自分だけが欲々しい気がしてならない。自ら積極的に求めてきたりする獄寺が俺にはいまいち想像できなかった。


いつもなら多少拒否られたくらいで諦めたりしないのに、その日の俺の心は折れたまんまで強引になれるはずもなく一緒の部屋にいるのにお互い別々のことをして過ごした。


それから三週間。


付き合ってから猫の盛り時期みたいに毎日のように触れ合っていたせいか、エッチはおろかキスさえしていない今のこの状況は正直精神的にも肉体的にも苦しい。

恋人同士なら当たり前に出来る行為を、何故こんなに必死に我慢しているのか意味が分からないけど、獄寺がそれを拒むのなら仕方がない。俺ばかり求めるのも何か違う気がしてこの三週間の間、自ら獄寺に触れることはなかった。同じ気持ちじゃないとそんな行為に意味なんてない。

こう見えて俺だって色々考えているのだ。それに比べ、獄寺はと言えばいつもとなんら変わらない。『十代目〜十代目〜』って言いながら向ける笑顔はツナにだけ。俺にも同じように笑いかけて欲しい・・とまでは言わないけれど、少しでいい。ほんの少しでいいから獄寺からのアクションが欲しい。





4週間目の金曜の夜。その日も獄寺が俺の家に遊びに来ていた。親父が握った寿司を2人で食べて、その後はいつものように俺の部屋で漫画読んだりゲームをしたりしてダラダラと過ごしていた。

夜も11時を回って睡魔が俺を襲う。獄寺がしている格闘ゲームの画面をボーッと見ているとうつらうつらと頭が傾いて、気を抜くと今にも意識が飛びそうになった。



「・・・・い」



「・・・・・・・」



「・・・もとっ・・・、い・・・・って」



頭の奥の方で微かに自分を呼ぶ声がするけれど睡魔の力でかき消される。



「・・・んだ・・・か・・・やま・・・」



ところどころ聞こえてくるその声が心地よくて眠りの深淵へと思考が飛んでいく。


「・・・・・・・・」


完全に意識が遠のいていくその瞬間、急にぞくりと下半身が疼いた。




(・・・・・んだこれ・・?きもち・・いい・・・・)


じわじわとゆっくりと下から押し寄せてくるその快感に身震いが起こる。遠くに飛んだはずの意識が少しずつ戻っていく気がした。モヤモヤしていたものが溶かされていくようなこの感覚は一体何だろう。


「・・・・・・っ」


ぼやけていた視界の焦点が少しずつ合っていくと同時に目の前の信じられない光景に目を見張った。


「・・・・ご、ごくでらっ!??ちょ、何やって・・・・っ・・」



驚いて飛び起きると、一番に目に飛び込んできたのは下着からおもむろに晒されている自分の性器を口に含んでいる獄寺の姿だった。
 

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