神楽坂真尋

取り替えの人生
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夜の町

遠くで消防自動車のサイレンが聞こえる。

どこかで火事があったのかな…

まあ私には何の関係もないことだけど……。


「学校ってところは…桜の木を植えろって法律でもあるみたい。ここもたくさん咲いてる」


私は見知らぬ街の見知らぬ学校の門から、ふらふらと校内に足を運んだ。

どこの学校も、校舎があってグラウンドがあって、桜が咲いていて


代わり映えしない。


私の傷心した気持ちだって、きっと傍から見たらありきたりなんだろうな。

でも、死んじゃいたくなる。

他人と比べて、とりたてて目立つ人生じゃないけど、

代わり映えのしない人生かもしれないけれど

消えてしまいたくなる。


私の体重で折れない枝って、どのぐらいの太さのなんだろう…

私は、枝を手で引っ張りながら、あたりの桜の間を徘徊して、

これなら大丈夫と思える太さの枝に、手持ちのロープをひっかけた。


死にたい死にたいと思っていても、いざとなると手が震える。


なんで私が死ななくちゃいけないんだろうと、ふと思ったりする。


それでも、気を取り直してロープに顎を引っかけた。


そんなときに
ふと私の方を見ている視線に気づいた。


「何?見世物じゃないんだけど」

狼狽えている内心を悟られまいと、」視線の先を睨む。


「首つり死体は美しくない。美しいのは凍死かガス死だ」

響く声の男性…。

銀色の髪、白い肌、ほっそりとした体つきに小さな顔…

なんて冷静に分析できたのは、少し後のことになるんだけど


「何…あなた、血だらけで焼け焦げだらけじゃないの」

「お前には関係ない」

「ほっとけないよ。手当しなきゃ」


その男性は、少し驚いたように目を開いて、私を見た。

その瞳は、街路灯の明かり位じゃしっかりとは見えなかったけど

……真っ赤……に底光りして見えた。



to be
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