企画部屋

□夕焼けの中で
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 真っ赤な太陽が辺り一面に赤い光を撒き散らし、黒い影を落とす。

 それを見る度、自分みたいだと思った。

 血の赤と、闇の黒。

 美しいコントラストに露ほどの感動も覚えず、むしろ暗い連想しかできない自分に斎藤は小さく一つ溜め息をついた。

 「何考えてるんですー?」

 前を行っていたはずの沖田がひょこりと斎藤の顔を覗き込んだ。

 「……何でも無ぇよ」

 僅かに笑んで、頭を一二回撫でてやる。

 「子供扱いしないで下さいよォ」

 ぷくりと頬を膨らます沖田の顔が可笑しくて、斎藤は思わず吹き出した。

 「あー!失礼ですねぇ、人の顔見て笑うなんて」

 悪ぃ、とくつくつ笑みを零しながら斎藤は言う。

 「文句言う前に姿見で自分の顔見てこい」

 未だ笑い続ける斎藤に沖田は不満そうに唇を尖らせていたが、ふいに笑った。

 「……ま、いっか」

 「何だ?」

 流石に笑みを止めて尋ねると沖田は斎藤の右手を両手で優しく包み込んだ。

 「あなたが笑ってくれるならそれでいいです」

 にっこり笑いながら沖田は言葉を紡ぐ。

 「あなたが楽しそうなら……幸せそうなら、それで」

 幸せ、という単語がしっくりこなかった。

 幸せとは何なのか、斎藤にはよく分からない。

 「……お前は、幸せか?」

 斎藤自身は自分が不幸だと感じたことこそ無いが、幸せだという抽象的な概念もよく分からない。

 「幸せですよー」

 にへらと沖田が笑う。

 「皆と京に来て、自分ができることを精一杯やって、誰かに必要とされて。

 あ、それに何より」

 沖田は斎藤の腕をぐいと自分の方に引き寄せて、はにかむ様に笑った。

 「あなたがそばにいるだけで、僕は幸せなんだと思います」

 答えを聞いて、「阿呆が」と斎藤は呟いた。

 一瞬苦笑してから沖田は斎藤の顔を覗き込んだ。

 「あれ?斎藤さん顔」

 「うるさい」

 「真っ赤ですね」

 「気のせいだろ」

 「いーえ、違いますね」

 にやけ面を隠そうともせずにしつこく纏わり付く沖田に斎藤は嘆息した。

 「……夕日のせいだろ」

 僅かに視線を反らして斎藤は呟いた。

 沖田の手に包まれた手は、ほんのり暖かかった。




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