戦国BASARA

□運命とは呼ばない(4)
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 小十郎が目を覚ますと、そこはベッドの上だった。

 目を擦りながら起き上がろうとすると、腰に走る激痛に思わず声を漏らす。

 何があったかよく覚えていない。

 (思い出せ、俺)

 まず、今日は土曜で朝から部活だった。

 部活が終わり、自宅に帰ってきて。

 そうしたら何故かリビングには松永が居て。

 それから何故かいきなり壁に押し付けられて。

 そして。

 思い出してしまうと、小十郎は耳まで真っ赤になった。

 そうだ、抱かれた……いや、犯されたと言った方が正しいかもしれない。

 大体、一度も合意していない訳だし。

 何度か「やめろ」と言ったはずだ。

 こういうことは世間では「強姦」と言う筈だ。

 犯罪の域だ。

 そう思考を巡らせながら、何故か自分が一糸纏わぬ姿であるのに気がついた。

 米神辺りが痛くなってきて、軽く解しながらジーンズとTシャツを身につけ、寝室から出るとソファに座ってうたたねをしている松永が居た。

 思わず足音を消して近づくと、松永の顔を覗きこむ。

 大体、小十郎は松永の顔をじっくりと見たことすらなかった。

 黒髪に微かに混じった白髪や整えられた髭を加味してもこいつが何歳なのかはよく分からないなと一人考えた。

 新聞部所属でクラスメイトの猿飛に聞いてもこの男のことは全くと言っていいくらい分からない。

 小十郎は、それが不満だった。

 松永は自分のことを知っている。

 どの程度かは分からないが。

 それでも自分が一人暮らしをしていることや二親をなくしたことは知っているはずだ。

 しかし、自分は知らない。

 この男の、家族構成も、出自も、年すら。

 別に好きなわけじゃない。

 ただ、何も知らないまま振り回されるのは気に食わないのだけは確かだった。

 高校の教師だということしか知らないの男に、精神的な意味でも身体的な意味でもここまで進入を許しているのが自分でも信じられない。

 「何も、知らないくせによ」

 何で許してるんだよ、とその言葉は胸の内だけで呟いた。

 「ほう、では」

 薄い唇がそう言葉を紡ぎ、腕を急に引かれて男の腕の中に囚われていると気付いたのは向かい合ってぎゅっと抱きしめられたその後で。

 「てめっ、いつ起きてっ……!!」

 かああと顔が赤くなる。

 基本的に小十郎は人とのスキンシップが苦手だ。

 人の体温を直に感じる行為はどうも慣れない。

 「卿の気配で起きたのだよ、いや、元気そうで何より」

 そう笑む松永に、違和感を覚える。

 (ひょっとして俺が起きるまでここに居た……とか……)

 ありえ無ぇか、と自己完結させる。

 そんなに優しい男なら無理やりその操を奪ったりはしないだろう。

 「確かに私はまだまだ卿のことを知らないな」

 だからこうしようではないか、と松永は笑う。

 「これから毎週、土曜日と日曜日はこうして愛を深めようではないか」

 「は?」

 思わず訊ね返すと松永は何とも楽しそうに言う。

 「恋人同士なら外で逢引でもしようものだろうが、私達は一応世間体を気にしなくてはならん。だから家の中で愛を深めようというわけだ」

 「いや、訳分からねぇ。なんでたまの休みまでてめぇと一緒にいなくちゃなんねぇんだ!」

 休みくらい休ませろ!と叫ぶ小十郎に、松永はその額に軽くキスを落とした。

 「何、私が卿を愛でたいだけさ」

 あくまで自己本位な意見をさらっと述べる松永に、小十郎はあきれ果てて反論すらできなかった。




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