ONEPIECE
□暫しの逢い引き
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レインディナーズの地下、限られた人物しかその存在を知らないバロック・ワークス社長の執務室にて、クロコダイルは書面に羽根ペンを走らせていた。
ペンが走る音と微かに紙の擦れる音以外に何の音もしないその部屋に、外部からの喧騒が漏れ聞こえる。
「……お待ち……く様……」
「……そこ……立入禁止で……」
断片的に耳に入ってくる言葉にクロコダイルは眉をひそめた。
どこの馬鹿だ?
ピンクの阿呆鳥か?
それとも天然馬鹿鷹か?
しかし執務室の扉を蹴破らんばかりの勢いで部屋に入って来たのはそのどちらでもなく、二人より遥かに若い男。
「よっ、クロコダイル。久しぶり!」
明るい声と満面の笑みでそう言ったのは、"火拳"と異名を取る"白ひげ"の二番隊隊長。
ポートガス・D・エース。
「……何しに来た」
不機嫌を前面に押し出してクロコダイルがそう言うと、エースは人好きする笑みで言う。
「いやぁ、ちょっとアラバスタに滞在しなきゃならねぇ用ができたもんでさ。
どうせならクロコダイルの顔が見てぇなぁ……って思ってよ」
「……へぇ……つまりついでってことか」
書面から目を離さず、クロコダイルは呟くように言った。
エースは一瞬ぽかんとしてから、にっと悪戯っぽい笑みを見せた。
「ひょっとして妬いてくれてたり…」
「するか!」
相変わらず顔を上げること無く叫ぶクロコダイルに、エースは少し膨れる。
「なぁ、クロコダイル?」
「………」
「クロコダイルー?」
「……るせぇ」
ぼそりと言われ、しゃがみ込んで下からクロコダイルの顔を覗き込む。
覗き込んだその渋面は赤く染まっていた。
エースは自分の頬が自然と緩むのを自覚しつつ立ち上がる。
クロコダイルの顎に指をかけて上を向かせ、バツが悪そうな顔をしているクロコダイルと視線を絡めた。
そのまま額に唇を落とし、囁いた。
「これから数日間、世話になりたいんだけど……いい?」
「……勝手にしろ、ガキが」
そう吐き出すように呟くと、拗ねたようにぷいと顔を背けた。
→後書き